大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『間諜中野学校 国籍のない男たち』砂糖壷のトリック、賑わう地元食堂

間諜中野学校 国籍のない男たち

太平洋戦争末期、陸軍中野学校に入学した有坂明夫(二谷英明)は中支へ派遣され、宝石商というふれこみで現地宝飾店へ勤め、抗日ゲリラの情報を収集する任務にあたる。有坂はその街で、卒業演習で軍事工場に潜入して捕縛されて以降行方不明になっていた同級生・原田(近藤宏)と再会。彼は軍部から小銭をもらって無為な日々を過ごすスパイとなっていた。有坂は原田とともに行動するうち、外国人向けの高級クラブで働く宋蘭花岩崎加根子)という女給に出会う。彼女は病気の妹(山本陽子)のため、なんとか金を作ろうと奔走していた。有坂は本来は二束三文にもならない指輪を彼女から買い取ってやり、それをきっかけに彼女と親しくなるが、戦火と抗日ゲリラの活動はますます激しくなってゆき……

陸軍中野学校もの、日活編。アクションテイストが強く、他社の戦争ものにあるような怨嗟が影も形もない。このペラペラっぷりがよくも悪くも日活らしいというか……。なので、岡本喜八などのような東宝系戦争映画を期待するとかなりずっこける。しかし、厭世的な元同級生などのキャラクターは良い。日活アクションと割り切って観るべきなのだろう。

※本来は作中に登場する食べ物すべてをカバーしたいのだが、鑑賞本数が多いため、記事を書くスピードが全然追いつかなくなっている。なので、本記事以降は登場する中で印象的な食べ物だけをピックアップして書く形式にしようと思う。


┃ 砂糖壷のトリック

陸軍中野学校の授業内容「コーヒーに毒入り砂糖を入れて相手に飲ませる方法」。
砂糖壷の片側にだけ毒入りの砂糖を入れておき、相手に飲ませるコーヒーに入れる分はそこから砂糖を掬い取り、自分のコーヒーに入れる分を取るときは逆側から掬い取るというトリック。同じ砂糖壷から砂糖を取っており、自分も口をつけるので、相手に怪しまれずに毒を盛れるというわけ。二谷英明が授業で模範実習をさせられる。

┃ 賑わう地元食堂

有坂が原田に連れて行かれる食堂。カウンターとテーブルがいくつかあるだけの小さい店で、常連客らしい地元民で賑わっている。
カウンターの上には卵が山盛りにされたカゴが置かれており、その向こうで店主がせっせと料理を作っている。原田は常連らしく、店主が適当に見繕って料理を出してくれるようだ。よそのテーブルには豚足が出されている。他のテーブルでは日本軍の横暴に怒る民衆たちが騒いでおり、まだ土地に慣れていない有坂は驚くが、原田は冷静に彼を制止。この土地に長くいる原田は、日本軍の劣勢を知っていた。