大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『牝犬脱走』配膳当番、サンドイッチ

牝犬脱走

規律正しいとある女子刑務所雑居房に入れられた北城加代(炎加世子)は、同房の長池春美(滝瑛子)、西田礼子(坪内ミキ子)、小出ユキ(高田美和)から脱獄計画を持ちかけられる。彼女らはそれぞれシャバに未練を残したままこの刑務所に入れられ、遠い未来の釈放日を待つ身だった。叔母に預けた子供のことが心配な加代は、心優しい関根保安課長(文野朋子)に子供の様子を見に行ってもらうも、子供がどう過ごしているかを聞いたときに関根保安課長が言葉を濁したことから、子供が不幸な目にあっているのではと思い、ユキらの脱獄計画に加担することに。看守の監視が薄くなるレクリエーション大会の日、彼女らは刑務所を脱走する。

大映の女囚もの。色物っぽいタイトルだが、内容はわりとまとも。とは言っても、映画としてはどうかと思うが……。


┃ 配膳当番

ユキらは刑務所のレクリエーション日、みなが卓球に興じている間に食事の準備をする配膳当番になり、看守の隙をついて脱獄する。東映だと刑務所もの=食い物描写が病的に執拗なのが定番だが、大映ではさほどでもないのが会社の特色か。ユキらもさらっと普通に配膳当番をこなしていた。

┃ サンドイッチ

4人は脱獄後は、それぞれシャバに残した「未練」のもとへ向け、ばらばらに行動することになる。そのうち加代はホステス時代の友人の家へ転がり込む。友人は加代の姿を見て驚くが、すぐに彼女をかくまってくれる。このとき友人が加代に作ってくれるのが、薄いトーストにバターを塗ってハムを挟んだサンドイッチ。ほかにも森永牛乳や巨峰を出してくれる。加代はこの食事にがっつく。

東映だと『冬の華』で「ムショから出たばかりの健さんがパンにジャムをぬるとき、ジャムを2度塗りする=ムショの中では甘いものに飢えて
いるので、別にそんな旨いわけじゃないジャムでも思わずたっぷりつけてしまう」というわざとらしすぎるシーンがあったが、本作ではそういうものはなかった。