『ペン偽らず 暴力の街』闇米、銘仙協会招待の宴会と寸志のお酒、新庁舎落成式、みかんの盛り合わせ
ペン偽らず 暴力の街
- 1953年/制作=「ペン偽らず」製作委員会/配給=大映/白黒/111分
- 監督=山本薩夫
- 原作=朝日新聞浦和支局同人、脚色=八木保太郎、山形雄策
- 出演=原保美、池部良、宇野重吉、英百合子、三条美紀、三島雅夫、岸旗江、志村喬
時が止まったような街・南條町は銘仙の名産地である。各地で闇織物の摘発が相次ぐ中、この街では闇銘仙が摘発されたことはなかった。警察関係者・報道関係者が招かれたある宴会に出席した正義感の強い東京新報記者・北(原保美)は、その宴席が銘仙協会の招待と知るや否や憤慨し、席を辞してそのことを記事にしてしまう。これに怒った町会議員・大西(三島雅夫)は、検察庁・簡易裁判所の新庁舎落成式で北をひっぱたき、配下のやくざ・大西組を使って北と東京新報に圧力をかけようとする。支局長(志村喬)は北の身の安全を考えて他の支局へ一時転属させ、別支局の川崎(池部良)を調査に向かわせる。
裏の顔を持つ権力者とそれに癒着する警察・検察とペンで戦う新聞記者たちを描く……というテーマは大変重厚だと思うのだが、新聞や市民は常に正義であるという観念が今の感覚では辛い。『不知火検校』や『県警対組織暴力』とは対極的というか……。ドキュメンタリー風にしているのでそう簡単にもいかないんだろうけど、言いたいことが前に出過ぎて意見広告みたいになっている印象。いや、そもそもそういう目的のものなのかもしれない。
┃ 闇米
オープニング。ひなびた街の川沿いの道にある小さな交番の前に、検挙された闇米が地面にこぼれているのが映るシーンがある。この街では闇米は検挙されても、闇銘仙が検挙されることはほとんどない。
┃ 銘仙協会招待の宴会と寸志のお酒
警察署長らが招かれた宴席に出席した各紙の新聞記者たち。その宴会があまりにだらしないことに驚く新人記者の北だったが、その宴会が銘仙協会の招待だと知って怒りを隠せない。宴会で出されている料理はよく見えないが、各人の前にお膳を置く形式の料亭での宴会なので、高級料理のはず。闇米が出回っている時代にはあまりに贅沢な席(と言いたかったのかな?)。正直、このシーンは説明的すぎる気がした。
直後、警察署の所長室が映るシーンで、署長のデスクの上に「寸志」というのし紙のかかったお酒が映る。これも銘仙協会からの賄賂のようだ。