大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『夕陽に赤い俺の顔』りんご、中華料理

夕陽に赤い俺の顔

医者、フットボール選手、植木職人(?)、ヤギ連れ娘、ダンディ、元伍長、オネエ口調の若造、ポエマーと、異様にキャラが濃い8人が集う殺し屋クラブの面々が請け負ったのは、悪徳土建屋の「不都合な情報を握っている業界紙女性記者の暗殺」依頼。メンバーは我こそは適役と大騒ぎ、その役目を負うスナイパーを決めるコンクール「競馬場で一着になる騎手の帽子を撃ち落とす、ただし間違ったら罰金5万円也」を行うことになるが、優勝したのは、たまたまそこに居合わせた射的屋のバイト・川津祐介だった。

脚本は寺山修司だが、本人の映画や演劇で見られるようなアングラ臭はなく、『殺しの烙印』や『東京流れ者』のようなキッチュ&ポップな日活アクションテイストが炸裂する奇妙なプッツン映画になっている。

┃ ウイリアム・テルのりんご

アバンタイトルで、幼い男の子が頭の上に乗っけたリンゴを腕自慢の殺し屋たちが次々撃ち落としてゆくというダサすぎてもはやオシャレの領域に到達しているシーンがある。殺し屋たちの得意武器はそれぞれ違っているので、リンゴの飛び散り方や打ち抜かれ方が全部違っていて楽しい。

┃ ミーティング食事会は中華料理で

途中、ミーティング食事会で中華料理を食べるシーンがある。着流しの植木屋(?)は口に合わねぇと文句を垂れるが、フットボール選手は「殺し屋も生活を近代化しなければいけない」と上から目線講釈を始める。結局みんなでモグモグするんだけど、若造が料理を取ろうとすると回転テーブルをフットボール選手らが回してしまい、なかなか取れずにムズムズする。
チンジャオロースーや焼豚のようなものなど、オーソドックスな中華料理がテーブルにたくさん並んでいて、レイトショーで観るにはおなかがすくメニューになっていた。


ところでフットボール選手であるが、普段からジャケットの下に地獄のようにダサいユニフォームが覗いているのを見て見ぬふりをしていたところ、仕事用の正装は試合用の防具をつけた姿で、度肝を抜かれた。あンた、団地でその格好はすさまじく目立ってるよ。しかも、演じているのが渡辺文雄で、いったい観客に何をアピールしようとしたのかさっぱりわからないが、松竹の血迷いってほんとすごいなあ、と思った私であった。