大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『集団奉行所破り』ところてん7皿

集団奉行所破り

徳川の治世、大坂の廻船問屋・河内屋善右衛門は公共工事にも惜しみなく財産をつぎ込んだ大人物であったが、悪辣な東町奉行・松平将監により打ち首獄門にされた。その仇を討たんがため、元海賊の勘助(金子信雄)は仲間を招集。悪源太(大友柳太郎)、丹次郎(里見浩太郎)らとともに、奉行所への押し込み強盗作戦を行うことに。彼らは奉行所内の情報を引き出すため、マムシと呼ばれる陰湿な同心・竹内金次郎(佐藤慶)の娘・お駒(桜町弘子)をかどわかそうとする。実はマムシはかつて河内屋の番頭であり、主人を裏切って奉行所についたと言われているのだが……

東映の集団抗争時代劇。講談のように軽妙な口上から始まるところからしてワクワク、リズムがよくてさっぱりとした大阪弁の台詞も気持ちよく、ギャグの連発ながらも品性がある粋な構成、登場人物たちもみなキャラがよく立っていてパリッと楽しめる。なんとなく佐藤慶が出てきたときは「お、佐藤慶ちょうど見たかったんだよね」程度に思っていたが、実はこの佐藤慶が物語の重要な鍵になっており、悪人ヅラを生かしたナイスな役を演じている。

┃ 茶店でところてん7皿

そんな佐藤慶の娘・桜町弘子に惚れた(けれども金子信雄らに命じられてかどわかしをしなくてはならない)里見浩太朗が彼女を天神様で待っているときに茶屋でモグモグしているのがところてん。平たい皿にニュルンとところてんが渦を巻いて、黒蜜か酢じょうゆか、茶店の主人が黒いタレをかけてくれる。縁台でところてんをすする里見浩太朗の横には食べ終わった皿がたくさん積まれているが、別にところてんが好きなわけではなく、不本意にすすっている模様。2刻で7皿食べたところで桜町弘子が現れ、思わずダッシュした里見浩太朗茶店の主人は「お代ー!」と呼び止め、お金を受け取ったら今度は「おつりー!」と呼び止めるのであった。よい客だ。