大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『銀座のお兄ちゃん挑戦す』焼き芋、ミルクスタンドの牛乳、差し入れのポットコーヒー、ラーメン、親子丼と上天丼

銀座のお兄ちゃん挑戦す

銀座小学校を卒業し今も銀座で働く仲良し三人組、伸太郎(三上真一郎)、昌也(小坂一也)、吾郎(小瀬朗)。吾郎がバーテンを勤めるカフェバー「エトアール」が入っているビルのオーナーで洋裁店「リエンヌ」の経営者・文恵(高千穂ひづる)は洋裁学校を設立しようと、商事会社社長・黒田(西村晃)に仲介を頼み、彼の紹介で融資を受けて2000万円で郊外の土地を入手する。ところがその土地は数年後に道路建設が決まっており、そればかりか黒田の作成した委任状に判を押してしまっていたため、1ヶ月以内に借金を返さないとリエンヌやエトワールが入っているビルが担保で取られてしまうという。しかも、黒田は選挙違反で騒がれている代議士・中津川(沢村国太郎)と繋がっていた。

ちょっとびっくりするほど中身のない話。土地詐欺とビルの担保問題、洋裁店のお針子たちの労働問題、お兄ちゃんたちの恋模様、裏社会とつながる代議士、不正経理スケープゴートにされた会計責任者など、チマチマした要素がゴチャッと絡み合っているにもかかわらず、観ているはしから内容を忘れてゆく。さわやかフレッシュな気持ちのいい話ではあるのだけれど。一番印象的なのは、こんなライトコメディなのに監督が野村芳太郎なことだろうか……。

┃ 焼き芋

洋裁店・エトアールのお針子たちの残業時の夜食の定番は焼き芋。ビルの前に回って来る焼き芋屋台から買っている様子。おごりあいっこもしているようだ。

┃ ミルクスタンドの牛乳

伸太郎が駅の改札内地下通路にあるミルクスタンドで牛乳を飲んでいるとき、秋田から上京してきた田舎娘・あけみ(富永ユキ)が愚連隊にからまれているのを目撃。いとこのふりをして彼女を助け、さらにはなじみの天ぷら屋「天松」に彼女を紹介し、住み込みで働かせてもらうよう頼んでやる。
主人が天ぷらの仕込みをしているときも彼女は手伝わず、電話にかじりつきでボーイフレンドたちとお話しているが、実はこれ、彼らを客として呼ぼうとしていたのであった。なかなか商才のある娘さんだ。

┃ 差し入れのポットコーヒー

忙しくて残業続きのリエンヌのお針子たちにコーヒーの差し入れを持っていく吾郎。お店のポットとカップを持ってきて、1杯ずつ振る舞ってくれる。気分転換に本格コーヒーをちゃんとしたカップ(華奢で可愛いやつ)で飲めるのは嬉しいね。

┃ 昼ご飯の出前ラーメン

黒田が実は悪徳ブローカーだと知った文恵は土地会社に直談判に行くが、担当者はラーメンをすすりながら「詳しいことは黒田さんにお話しておりますので」と取り合ってくれない。

┃ 取り調べ中の親子丼、差し入れの上天丼

記者会見でシラを切り通す代議士・中津川をぶん殴ってしまった伸太郎は警察に捕まってしまい、留置所に入れられるも、署長のはからいで出前の親子丼をごちそうになりながら「わしも若い頃腹立つ教師をぶん殴って留年したよ」という話を聞く。そして、彼にホの字の天松の娘・美佐子(芳村真理)も上天丼をお重に詰めて差し入れに来てくれたのであった。