『海燕ジョーの奇跡』コカコーラ、泡盛、おにぎり、高級フィリピン料理、パパイヤ、オムレツ、スイカ
海燕ジョーの奇跡
- 1984年/三船プロダクション+松竹富士/カラー/133分
- 監督=藤田敏八
- 出演=時任三郎、藤谷美和子、田中邦衛、清水健太郎、五月みどり、原田芳雄、三船敏郎、正司歌江、原泉、加藤嘉、内藤武敏、鈴木瑞穂
地元ヤクザの抗争渦巻く沖縄。フィリピン人の父と沖縄人の母を持つ混血のチンピラ・ジョー(時任三郎)は島袋一家に身を置いていたが、琉球連合から切り捨てられた組は解散に陥り、組長は東京へ姿を消した。ある日、ジョーの弟分が琉球連合那覇派のヤクザに殺されるという事件が起き、ジョーは報復に琉球連合の理事長を射殺。追われる身となったジョーは恋人・陽子(藤谷美和子)の助けで郊外の廃屋に潜伏する。ジョーは台風の夜に密かに母に会いに行き、10年前にフィリピンの父から来たという「英語の手紙」を預かった。しかし廃屋も警察に嗅ぎ付けられ、ジョーはバスであてどもなく逃げることに。そのバスで偶然再会したムショ仲間の左翼活動家・上勢頭(田中邦衛)の助けにより、ジョーは漁船を乗り継ぎ与那国・台湾経由で未だ見ぬ父のいるフィリピンへと脱出する。フィリピンでは、陽子の紹介により与那嶺(原田芳雄)という怪しい実業家?が彼を待っていた。
フィリピンロケはすばらしい。高級ホテルやビーチといった観光的な場所はもちろん、スラムや繁華街の裏通り、マニラマフィアのアジト、密輸船といった後ろ暗い場所もたくさん登場し、見応えがある。特にマニラマフィアのアジト、まるで学校か病院かのような白い壁が果てしなく続き、セル状の部屋が規則的に並ぶ不思議な建築物で、それぞれの部屋を横移動で撮っていくのだが、浮浪児の学校のようになっている部屋、娼婦のような女がたまっている部屋、ローカル博奕が行われている部屋と、本当に向こうの世界を覗き見ている感覚に陥る。
ただ、肝心の話がチンピラ青年の青春映画としてあまりに薄っぺらい。原田芳雄、三船敏郎などは独特の存在感の役を演じていて味があるが、若者が全部「青春映画に出てくる若者」としか言いようのないテンプレキャラなのだ。恋人・藤谷美和子など「NPCか?」と思うようなペラペラの人物造形。それが80年代の雰囲気なのかもしれないが……。
あと、登場する女性全員がパールのマニキュアをしているのが気になった。
┃ コカコーラ、泡盛、おにぎり
まだ事件を起こす前のジョーが陽子の家に泊まったときに飲むのがコカコーラ。瓶入りのものを陽子が栓を抜いて渡してくれる。
事件を起こし、追われる身となったジョーが田中邦衛の家で飲むのは泡盛。田中邦衛がカメ入りのものを買って来てくれたのだ。ここでジョーは彼に国外逃亡を相談し、「左翼仲間をよく南へ逃がした」という田中邦衛の手助けによってひとまず与那国まで逃げる経路を確保できた。
その与那国へ行く船で船頭がジョーに渡すのがおにぎり。木で作った小舟にエンジンをつけた簡素な船のため、大揺れに揺れまくって船酔いしたジョーは船頭がくれたおにぎりを食べられないのであった。
┃ ホテルのレストランの高級フィリピン料理
フィリピンに着いたジョーは「ミスター与那嶺」という男を訪ねてマニラホテルへ。与那嶺はマニラホテルのスイートルームに住む怪しい実業家?で、食事はいつもホテルのレストランで高級フィリピン料理(メニューはよくわからないが、料理の盛り方や彩りからエスニック料理=場所柄フィリピン料理と判断)。与那嶺はジョーが「(勘定は)俺が出します」と言ったのをいいことに「ごちそうさん」とチップまで払わせるのであった。
┃ 露店のパパイヤ、ココナッツジュース
陽子がマニラにやって来た。置き引きに遭って無一文になったジョーは与那嶺の下で働いていたが、休暇をもらって陽子とバカンスへ出かける。ビーチの露店でジョーが買うのがでっかいパパイヤ。二つに割ると美味しそうな果汁が流れ出し、ツブツブの黒い種がついたワタ部分もみずみずしい。
そういえばどこでだったか、割ったココナッツからココナッツジュースをすすっているシーンもあったな。
┃ 手作りオムレツ
陽子とキッチン付きホテルに泊まったジョーは、キッチンで夕食を手作り。おいしいぞぉ〜と言いながらチマコラとオムレツを作っているのだが……それがどう見てもただのオムレツ。フィリピン風オムレツとかじゃないのか。なお、フィリピン風のオムレツと言えば焼きナスまるまる入ったピカタみたいなもの、らしい。お金がないから自炊しているらしいし、節約料理なのか。でも、一応食卓にはフルーツとかがたくさん入っているようなサラダっぽいボウルが出ていた。ちょっとおもてなし風である。