大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『北海の暴れ竜』桃と大福、おでん、ご飯とみそ汁と小さな焼き魚

北海の暴れ竜

大網元である父と喧嘩して家を出ていた次郎(梅宮辰夫)が数年ぶりに帰郷すると、実家は見る影もなく没落していた。岩幌の大会社・芦田水産の社長親子が次郎の父を殺し、漁師たちを配下に置いて安給料でこき使っていたのである。次郎は怒りに任せて芦田のもとへ殴り込むが、返り討ちに遭ってしまう。芦田水産には熊田(高城丈二)という子犬を抱いた不思議な用心棒がいて、対立関係ながら、次郎は彼と不思議な友情で結ばれることに。次郎は芦田に攻撃を仕掛けるチャンスを待つが、兄を根性なしと思い込んだ弟・真吉(谷隼人)が仲間とともに先走ってしまい……


『ジャコ萬と鉄』のような荒海あれくれ映画。没落させられた網元の息子が悪辣新興水産会社に戦いを挑むという筋は『日本侠客伝』あたりにありそうだが、思わせぶりさや湿っぽい情感を排除したスピーディーで荒々しい演出で見応えスッキリ。
人物造形がテンプレでないところも良い。異様に凶暴な室田日出男が印象的だが、その父(芦田水産社長)・安倍徹はいつも妙に室田日出男を心配していて、実はいい人なのでは? と思わされる。最後、息子の亡骸に取りすがって大泣きするシーンはヤクザ映画ではあまりない展開。あ、悪人と言っても一辺倒な悪人ではないんだな、と思わされる。
梅宮辰夫の不良番長チックな殺陣は素人が戦ってる感があり、これも良い。
怒濤の飛沫を上げる日本海の荒波や勇壮な漁師歌、鮮やかにはためく原色の大漁旗など、視覚・聴覚的な満足度も高。

┃ 墓前に供えられた桃と大福

故郷に帰ってきて父が亡くなったことを知った次郎は墓参りへ。彼の一族の墓は海沿いの広い墓地の一角にあり、桃と大福が供えてある(大福の状態を見るに、次郎が供えたのかな)。

┃ 屋台のおでん

次郎の一家と古くより付き合いのあった由利徹は、女房と屋台のおでん屋を経営している。さすが食べ物映像に強い深作欣二と言うべきか、グツグツと煮えるおでんを映すカットがあり、寒そうな港町に暖かいおでんという小物使いが利いている。
由利徹は女房にシッポ呼ばわりされている“竜のシッポ(の入墨をしている)”だが、「うなぎもしっぽのほう食ったほうが精力つく」とブツブツ言っていた。

┃ ご飯とみそ汁と小さな焼き魚

次郎の一家は網元と言えど没落しているため、食事は貧しい。ご飯とみそ汁と小さな焼き魚のみ。を一家と使用人で黙々と食べている。

┃ サッポロビール

なお、作中で飲まれているビールの銘柄はサッポロ。