大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『シルクハットの大親分 ちょび髭の熊』絶倫丸、青酸加里、段々ケーキ

シルクハットの大親分 ちょび髭の熊 [DVD]
シルクハットの大親分 ちょび髭の熊

明治初期。四国道後の熊虎親分(若山富三郎)は熱海へ視察旅行?にやって来た。ひょんなことから地元の実業家・小栗子爵(北龍二)の令嬢・梓(橘ますみ)を助けた熊虎親分。子爵は熊虎親分にアメリカから輸入する「おーともーびる」というモノを悪辣な実業家(安倍徹)の魔手から警護してほしいと頼む。熊虎親分の奮闘により「おーともーびる」こと「自動車」は無事日本へ上陸した。その自動車の技師としてアメリカからやってきたのが、なんとかつての熊虎の子分・伊庭新二郎の弟、新吾(伊吹吾郎)だった。自動車は天覧ののち天皇に献上されることとなったが、そんな小栗子爵を妬む安倍チャンらがしつこく妨害してくる。そんな大ピンチの熊虎親分の前に颯爽と現れたのは、あの緋牡丹のお竜(藤純子)だった。


『緋牡丹博徒』のスピンアウト、『シルクハットの大親分』の続編。
かわいらしく楽しいコメディで、特に日本に初めて入ってきた自動車の試運転にみんなが驚くくだりが良い。技師が修理にとりかかっているうちに熊虎親分がうっかりアクセルを踏んでしまい、街中やら田んぼ道やら豚小屋やらをチョコマカ走り回るはめになる様子が早送りで描かれ、スラップスティック調でおしゃれ。ベッタベタだがほんわかする。
栗子爵&爺は熊虎親分に親しみを持っているが、彼がやくざであるゆえ、天皇に自動車を献上するには縁を切らざるを得なくなってしまう。そこで熊虎親分が泣いちゃうのがもうかわいそうでかわいそうで……。子爵&爺の不本意ながらという様子にも涙。

┃ 熱海名物・絶倫丸

熱海にやってきた熊虎親分、熱海名物「絶倫丸」なるクスリを芸者からもらう。この「絶倫丸」のビンのラベルが大写しになるのがザ・鈴木則文で笑える。真っ赤なでっかい丸薬という見た目もベッタベタで最高だ。この「絶倫丸」、イモリの丸焼き、オットセイのチンチン、まむしの生き血、クジラのキンタマ(しかもメスの)、が入っているそうだ。効果のほどは、「1錠でテキメン、2錠も飲んだら気違いみたいになって、3錠も飲んだら、もう……」らしい。

┃ 青酸加里

この宿・河野屋を横川組に渡さねばならなくなった女将(白木マリ)は悲観して「青酸加里」を飲んで死のうとする。あわてて止めようとした熊虎親分ともみ合ううち、青酸加里と絶倫丸のビンが入れ替わってしまい、女将がグイッと飲んだのは……。
後の展開は言うまでもない。ザ・鈴木則文

┃ 段々重ねのビッグなケーキ

栗子爵の邸宅では「おーともーびる」の輸入契約に成功したことを祝して夜会が開かれている。夜会の会場に置かれているのが5段重ねくらいの段々ケーキ。はじめはスミッコに映っている(わりにでかい)程度だが、この後、子爵の“番頭”、重兵衛(石山健二郎)が梓とダンスする熊虎親分を止めようとしてはねとばされ、おもいっきりケーキに突っ込むというオチに使われていた。ケーキに立ててあった飾りのお花が重兵衛の頭に乗っかってしまうというベタベタオチ。最高だ。ザ・鈴木則文