大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『博奕打ち いのち札』結婚式の鯛、みかん、おでん、カニ鍋、精進落としの食事


博奕打ち いのち札

直江津で出会った女剣劇のスター・静江(安田道代)と東京大森のヤクザ・清次郎(鶴田浩二)。二人は愛し合い一年後の再会を誓うが、清次郎は出入りによって監獄送りになり、5年の刑期を勤めることになる。そして歳月は流れ、清次郎は面会に来た親分(水島道太郎)から結婚の相談を受けるが、その妻というのがなんと静江であった。静江もまた思いがけない形での清次郎との再会に驚く。一方、開発が進む大森の利権を巡り、上部組織の総長(内田朝雄)は清次郎たちの一家を疎ましく思っていた。護岸工事を巡り様々な思惑が渦巻く中、外部から新興やくざ(天津敏)が侵攻してくる。


一度は将来を誓った二人が、親分の妻・代貸という最悪の形で再会するという悲恋物語。そのメインストーリーに、一本気で一家を思う心は誰よりも強い若山富三郎、水島道太郎一家を疎む上部組織の総長・内田朝雄、水島一家をやたらと妨害してくる天津敏一家、水島一家の若い衆・渡瀬恒彦鶴田浩二の留守を守る遠藤辰雄正司照枝夫婦など、様々な人々の微妙な心の機敏・綾が重なり合い、重厚な世界観を作り出している。

┃ 結婚式の鯛

水島道太郎・安田道代の結婚式では儀式用の鯛の塩焼きが出されている。

┃ みかん

鶴田浩二が留守の間、彼の家を守っているのが遠藤辰雄正司照枝夫婦。遠藤は正司に博奕で負かされるが、負けが払えないと見るや、正司はみかんを彼に投げつけるのであった。一応預かりものの家なのに、壁にはみかんのシミが……涙。

┃ おでん

遠藤辰雄正司照枝夫婦は小さなおでん屋を営んでいる。水島一家の若い衆・渡瀬恒彦はその常連。夫妻が出してくれるアツアツでうまいだしをたっぷり吸ったおでんをいつもモグモグしているが、店の片隅で細々夜食を摂っている不健康そうな売春婦を心配し、渡瀬は自分のおでんを彼女に譲る。

┃ カニ

水島道太郎が安田道代と改まった食事の席で、跡目を鶴田浩二に譲って自分は安田と隠居したいという話をしているときにお膳の上に出ていたメニューがカニ。立派なカニだった。直江津と何か関係あるのだろうか。ここで出されている料理がカニ料理であることはシナリオに指定されている。(参考:『笠原和夫 人とシナリオ』シナリオ作協会)

┃ 精進落としの料理

鶴田浩二は晴れて出所の日を迎えたが、その前夜、水島道太郎は天津一家の放った刺客(天本英世)によって殺されてしまった。水島がうんと豪勢にと願っていた鶴田の放免祝いだったが、水島の葬儀の精進落としの席がその代用となってしまった。
テーブルには練り物?の山積みみたいな大皿が置かれており、簡素なものだった。