大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『釜ヶ崎極道』殴り込み前の振る舞い酒、出所祝いの焼き肉、コーヒー、せんべい

釜ヶ崎極道

黒い山高帽がトレードマークの釜ヶ崎の親分、島村清吉(若山富三郎)は警察からの促しで島村組を解散。子分たちには正業につくように告げたはいいものの、自分はなかなか仕事ができずにいた。島村は芸能社を作ることを思いつき、旅の女剣劇一座のプロモートをすることに。座長・市川梅太夫(東三千)の美貌にぞっこんになった島村は、続々と帰ってきたかつての子分たち(潮健児山城新伍志賀勝ほか)と共に芝居を手伝いながら興行の旅を続ける。一方その頃、南河内では大規模な地上げが行われていた。それはかつて島村組と対抗していたヤクザで今はレジャー・興行会社社長に転身した遠藤太津朗らが政治家と組んで行っていることで、ゴルフ場建設に見せかけた空港の用地買収だったのである。


極道シリーズ8作目。
目に見えて安いセットに涙がこぼれるが、大俳優・若山富三郎大先生が “カメオ出演” するなど、観客サービスだけは超一流。剣劇のシーンも見慣れない身にとってはちょっと珍しくておもしろい。演目は定番の「国定忠治」。若山先生も役者として出演し、とんぼ返りを披露する。

┃ 殴り込み前の振る舞い酒

アバンタイトル、殴り込みの準備中の島村一家。子分たちには景気付けの酒が振る舞われている。もちろん、出陣前の女房(清川虹子)からの熱いチュウももれなくついてくる。

┃ 出所祝いの焼き肉

無事放免となった島村の出所祝いに、焼き肉パーティーをする一同。島村の自宅の狭い居間にみんながギッシリ集まって食べている姿は楽しそう&美味しそうである。この焼き肉はもちろん清川虹子が経営しているホルモン焼き屋(店名が崩し字で読めないのだが、「おねま?ん」みたいな感じの名前)からの出張メニュー。
……『極道VSまむし』ではこの肉の正体が「裏で飼っている野良犬(しかも犬の肉を食わして育てている)」になっていたが、この肉は一応ちゃんとした肉のようだ。何の肉かわかんないけど……。

┃ コーヒー

興行会社を立ち上げたものの、肝心の所属タレントがいない島村は、東映京都撮影所で俳優のスカウト活動を行うことに。そこへスイーっと入ってきた高級車から降りてきたのは大俳優・若山富三郎(二役・カメオ出演)。島村にすがりつかれた若山は、ビミョーに困った顔で彼をあしらうのであった。あまりにすごい楽屋落ちに泣かされる。
京撮でのスカウトがうまくいかなくて困っていた島村だったが、女剣劇一座と出会い、彼女らをプロモートすることに。小汚い社屋では何だということで、座長の市川梅太夫を連れて近くのキッチャテンへしけ込む島村。湯呑みみたいに胴のぷっくりした厚手のマグカップコーヒーにスプーンを突っ込んでカチャカチャとかき混ぜながら、彼女とのデート?を楽しむ島村なのであった。

┃ せんべい

最初の興行地では大成功した梅太夫一座&島村興行だったが、次の興行地、南河内では遠藤太津朗の部下・天津敏の妨害を受け、劇場を借りられなくなってしまう。島村を地元の農家地主で地上げをしている天津らに反抗している内田朝雄から土地を借り、即席のテント小屋を立ててそこで芝居を打つことにしたものの、客はせんべいをボリボリ食っている婆さん×2とスミッコでボーッとしている爺さんの3人だけという泣ける状況。片方の婆さんが爺さんにせんべいを分けてあげているのがさらに泣かせる。