『男はつらいよ』ビール・刺身・おかき、ホテルでの会食、ステーキ、バター、だんご、200円分のだんご、奈良漬け、ゆでたまご、披露宴のお膳、焼き鳥、すいか、サントリー角瓶、ラーメン
車寅次郎(渥美清)は、中学のときに父親と喧嘩して飛び出て以来、ずっと帰っていなかった故郷・柴又へ帰ってきた。久方ぶりに叔父の団子屋「くるまや」を訪ねると、妹・さくら(倍賞千恵子)は驚くほど美しく成長していた。叔父夫妻(森川信・三崎千恵子)が寅次郎の歓迎会を開いてくれるが、酒を飲み過ぎたおじさんは二日酔いになってしまい、翌日のさくらのお見合いに行けなくなってしまう。そこで寅次郎が兄として出席することになったのだが、その会場というのが高級ホテル。西洋式の会食のマナーを知らない寅次郎はさくらに恥をかかせ、せっかくの玉の輿お見合いをぶちこわしてしまう……。
大定番の国民的喜劇、男はつらいよ。
自分は断片的にしか観たことがないので、これが実質寅さん初鑑賞。知人が「初期の寅は本当アナーキーだから。行動が無茶苦茶だから。」と言っていたが、本当に無茶苦茶だったので驚いた。しかし、『馬鹿まるだし』のような身につまされすぎる痛みはなく、さすがに楽しく観られるように仕上がっていると思う。
┃ ビール・刺身・おかき
おじさん夫妻が久方ぶりに帰ってきた寅次郎のために開いてくれた歓迎会。店の奥の茶の間で簡単に開いてくれたものだが、近所の皆さんが好奇心で覗きにきている。そのときお膳に出されていたのが、ビール・刺身・おかき。刺身はよく見えなかったので、もしかしたらローストビーフかもしれない。そういう、茶色くて一口大に切ってある何か。おかきはピーナッツらしきものと混ぜられたやつで、皿に超山盛りになっていた。ビールの銘柄はアサヒ。以降、本作の飲み屋シーンなどで登場するビールはアサヒである。
┃ ホテルでの会食
さくらのお見合いに兄として列席することとなった寅次郎。タクシーで向かったのは「ホテル」、高級ホテルだった。高層の瀟洒な建物にビックリする寅次郎。
会食は個室でコース。マナーを知らない寅次郎はスープを音を立ててすすったり、下品な話をしてしまったり、ステーキをギコギコ切ってしまったりして、さくらの見合い相手一家(さくらの勤務先関係者)に顰蹙を買ってしまう。
ここで出てくるメニューで謎なのが、デザートのメロン。よくある8つ切りにしてあるヤツなのだが、それにボーイが何かのソースをかけて回っている。見た目は、ほとんど透明のべっこう色の、あめのような感じ。あのソースは何なんだろう。
このホテルは多分、ニューオータニ。
┃ ステーキ
調子に乗りすぎてさくらの見合いをぶちこわし、おじさん夫妻にメチャクチャ怒られた寅次郎は家出してしまう。
で、寅次郎は奈良で外国人観光客夫妻の案内バイト(?)をして凌いでいた。彼らはステーキを食っているというのに自分はここ2、3日ろくなものを食っていないとブツクサつぶやく寅次郎は、そこで柴又帝釈天の御前様(笠智衆)とその娘・冬子(光本幸子)に偶然再会する。
┃ バター
美しい冬子に一目惚れした寅次郎は、外国人観光客をほっぽり出して御前様&冬子の観光につきあうことに。行く先々で二人の記念写真を撮ってやる寅次郎だったが、御前様はいつも気難しい顔をして笑わない。まだ一枚も笑った顔を撮ってませんよ、と言いながらカメラを構える寅次郎に、御前様は撮るときに笑うと言ってこうつぶやく。
「バタァァァ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
???となる寅次郎&冬子、実はこれ、「チーズ」の間違いなのであった。
ちなみにこのギャグ(?)、さくら&博さんの結婚式の記念写真で寅次郎が御前様の真似をして「バタァ〜〜」とつぶやき、一同を???にさせるという形でリサイクルされる。
┃ だんご
……という一連の話を、冬子から来た絵はがきで知る「くるまや」一同。さくらはだんごを食べながらそのはがきを読む。
おじちゃん夫妻が店奥の茶の間のほうでだんごの仕込みをしているシーンなので、さくらが食べるだんごはその試食だろう。直前でおじちゃんがおばちゃんの差し出した小皿にだんご(たぶん草団子)を入れるシーンがある。
┃ 200円分のだんご
そこへやって来るのが、店の裏の印刷工場の職工のリーダー、博さん(前田吟)。だんご200円分、と言う博さんに、嬉しそうに対応するさくら。博さんは、店の中を抜けて行けば工場まですぐなのに、わざわざ表から回って帰ろうとする好青年である。その博さんを見送るさくらを見て、おじちゃん夫妻は「このままそっとしておけば、ふたりはうまくいくのではないか。寅次郎さえ帰ってこなければ……」とつぶやくのであった。
┃ 奈良漬け
……と、つぶやいた先から帰ってくる疫病神・寅次郎。冬子に一緒に帰りましょうと言われて調子こいて帰ってきたのである。ルンルンで土産の奈良漬け(多分。丸形の薄い平べったい容器に入っていて、ひもで釣り下げるように包んであるアレ)をポイッと差し出す。さくらは兄の帰宅に大喜びするが、くるまや一同へ土産と差し出したはずの漬け物の包みを持って冬子のもとへ急ぐ寅次郎の姿に、おじちゃん夫妻は先が思いやられるのであった。
┃ ゆでたまご
さくらにたかる印刷工場の職工たちを「うちのさくらは大学出のサラリーマンの嫁にやるんでぃ!」と追い払った寅次郎は、「大学出てないと結婚できないんですか!!」と反抗してきた博さんと船宿で決闘することに。寅次郎は博さんがさくらにホレていることに気付き、居酒屋へ博さんを連れ込んで恋愛指南講義をおっぱじめる(疫病神)。
このシーン、カウンターへ座っている博さん・寅次郎の向こうで男性の一人客がホステスと話をしているのだが、男性客の前に山盛りのゆでたまごが置かれており、男性客はホステスにそれを一つとってもらって殻をむき、塩をかけて食べている。ホステスは寅次郎の話を盗み聞き?して大爆笑するのであった。
┃ 披露宴のお膳
寅次郎の疫病神的活躍などの紆余曲折ありつつも、ついにさくらと博さんは結婚することとなり、今日はその披露宴。
博さんは以前「身寄りもほとんどないし……」とつぶやいていて、そのシーンでは「ほとんどって何?」と首をかしげたのだが、実は喧嘩して絶縁した大学教授の父(志村喬)と慎ましい母が北海道にいたのだった。
博さんの親族出席はこの二人だけ。さくら側の出席者(と印刷工場の仲間たち)は大騒ぎするが、志村喬夫妻だけは披露宴のお膳を前にしても箸をつけようとせず、仲居が注ごうとしたお酒も断って、まるでお通夜のような顔で座っている。
実は、志村喬は博さんを絶縁したことを後悔しており、たくさんの仲間たちに囲まれ幸せそうにしている博さんの姿を見て喜んでいたのだった。
ところでこの映画、やたらと「すいかの名産地〜♪」という歌をみんなが歌っているが、あれって一応結婚式向けの歌だったんですね。披露宴の出し物のシーンで印刷工場の仲間たちが歌っているところで気づいた。はじめのほうでさくらが博さんたちと一緒にギターを片手に歌っているのは、伏線になっていたんだな。
┃ 焼き鳥
また柴又へ居着くようになった寅次郎は、冬子のもとへ入り浸るようになっていた。
寅次郎は、くさくさするからどっかへ出かけましょうという冬子を小汚い焼き鳥屋へ案内する。お嬢様な冬子はそんな店には来たことがなかったが、出された焼き鳥を美味しいと頬張った。
そんな冬子を「(おいしいはずだよ、)ネコのハラワタだもん!」とちゃかす寅次郎は何も知らない幸せ者であった……。
このシーン、寅次郎がネコの形をしたピーマン(?)を手に持っているのがカワイイ。
┃ すいか
冬子と釣りに行く約束をしていた寅次郎は、二人分の釣り竿と麦わら帽子を持っていそいそとお出かけ。
ところが寺へ行くと、冬子はネクタイ姿の男と庭で楽しそうに遊んでいた。縁側には切られたスイカが出されている。約束を忘れていたという冬子に、寅次郎は遠慮して帰る。そして、御前様から、あの男は冬子の婚約者だと聞かされる。ショックを受ける寅次郎。