大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『怪談 かさねが渕』酒、お茶が三つ

怪談かさねが渕 [DVD]
怪談 かさねが渕

  • 作品内で表示されるタイトルには『怪談 累が淵』のサブタイトルあり
  • 1957年/新東宝/白黒/66分
  • 監督=中川信夫
  • 脚本=川内康範
  • 出演=若杉嘉津子、和田孝、丹波哲郎、岬洋二、花岡菊子、北沢典子、九重京司、阿部寿美子、中村彰、横山運平

羽生村の按摩・宗悦(岬洋二)は、旗本・深見新左衛門(中村彰)のもとへ貸金の回収に行くが、悪辣な深見は金を返さず宗悦を惨殺し、累が淵へその死体を沈めた。しかし深見は宗悦の亡霊に取り憑かれ発狂、妻を斬殺し自らも累が淵へ沈む。それから20年後。事件当時赤ん坊だった深見の息子・新吉(和田孝)は江戸の大店・羽生屋の番頭となり、わがままなお嬢様・お久(北沢典子)に仕えていた。そのお久は三味線を習いにいっていたのだが、三味線の師匠・豊志賀(若杉嘉津子)というのが実は按摩・宗悦の一人娘だった。新吉と豊志賀は親の因縁を知らぬまま恋に落ちるが……


三遊亭円朝の『怪談累ヶ淵』の映画化。尺が短いためかテンポのよい華麗な場面つなぎが印象的。思わせぶりなタメもなくスパスパ亡霊が化けて出るところも思い切っていて良い。豊志賀に懸想する悪辣浪人(映画オリジナル登場人物)として丹波哲郎が登場するが、初登場のシーンで一瞬西村晃と見間違えてびびった。

┃ 酒

旗本・深見新左衛門の邸宅へ金を回収に行った宗悦は、奥方から手厚いもてなしを受ける。彼の前にはやごちそうが並べられるが、宗悦は一杯だけ頂いたのちに、今日の訪問の理由として単刀直入に金を返してほしい旨を申し出る。ところが金を返せる見込みのない深見は、突然宗悦を斬りつけ、借金の話自体なかったことにしようとする。

┃ お茶が三つ

お久の三味線の師匠・豊志賀と懇ろになったことで羽生屋を追い出された新吉は豊志賀と所帯を持つが、豊志賀は三味線の撥が当たって顔に傷を負い、長いこと寝込むようになってしまう。一方、新吉に思いを寄せていたお久は浪人・大村(丹波哲郎)の入れ知恵で豊志賀に隠れて新吉と会うようになるが、それを知った豊志賀は狂死。にも関わらず、新吉は特にこれと言って思い直すこともなく、お久との駆け落ちを決行しようとする。
彼女と待ち合わせていた川端の料理屋、ここは豊志賀に二人の関係が見つかってすさまじい修羅場となった場所でもあるのだが、新吉とお久が料理屋の離れの二階に行って駆け落ちの相談をしようとしたところ、女中がなぜか三人分のお茶を出してくる。「私たち、二人連れですけど?」というお久に、女中は「おみえになったときは三人様かと思いましたが」と返す。そう、三人目というのは……