大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『喜劇 初詣列車』列車内でお菓子やジュース、弁当(鯛めし200円)、「CLUB KATOREYA」でビール、お菓子、上田家の朝食・野々宮家の朝食、給食で残ったパン、トラック八百屋、チャーハン・スープ・ラーメン、列車内で松茸の七輪焼き、フーテンカクテルとスリク、スナック菓子・りんご・大根、クリスマスディナー、上田家のクリスマスパーティー、白ワイン、みかん、お雑煮とみかん

喜劇 初詣列車 [DVD]
喜劇 初詣列車

上田新作(渥美清)は上越線で勤務する国鉄車掌である。今日も上越線はスキー客で超満員。越後湯沢で大方のスキー客が降りたところで、上田は小学校時代の同級生・美和子(佐久間良子)が客として乗っているのを発見する。新潟地震で父母を失った美和子は芸者となって弟を支えていたが、東京の印刷工場へ出稼ぎに行った弟の行方がわからなくなり、弟を探しに上京していたらしいのだ。同情した上田は、休暇日に印刷工場や若者のたまるゴーゴークラブを訪ねて回り、弟・研吉(小松政夫)を探すことにする。

能天気なお正月映画。
「列車」というのはだだの言葉のアヤだと思っていたが、駅舎や列車の映像がふんだんに使われており、鉄道成分がわりと濃い作品だった。小松政夫が泥酔した渥美清をタクシーに乗せ、運転手に「この住所まで送ってやって」と名刺渡してタクシーを発車させたら、向こう側のドアから渥美清が降りちゃってて敬礼してる、というシーンに腹がよじれるほど笑った。


┃ 列車内でお菓子やジュース

スキー客で超満員の上越線夜行急行内(車両タイプは165系、らしいです)。通路にまでたくさんの人が立っているので、検札に回っている上田はちょっと進むのにもひと苦労だが、スキー客の若者たちは持ち込んだお菓子やジュースを手にゆったり中。窓際のテーブルには、みかんと三越の包み紙でラッピングされた何かが置かれている。クリームをたっぷり挟んだクッキーのようなものを食べている女の子がいるのが気になった。

┃ 弁当(鯛めし200円)

越後湯沢を過ぎてスキー客がいなくなった車内をのんびり回っていた上田は、小学校の同級生だった美和子が乗っていることに気づく(美和子は新潟在住なので、終点の新潟まで乗車)。お弁当買ってきましょうかと気遣う上田に、美和子は「さっき買いましたから」と断る。すると後ろの方に乗っていたオヤジ(どら焼きみたいなのを食っている)が上田を呼びつけ、「弁当買って来て!」と言いつける。上田は「隣で買えますから(うろ覚え)。鯛めし200円!」とオヤジをスルー。オヤジは怒るでもなく、どら焼きを食べ続けるのであった。

┃ 「CLUB KATOREYA」でビール

今日は新潟泊の上田とその先輩・野々宮(西村晃)。二人は繁華街へ繰り出し、「CLUB KATOREYA」でビールを飲む。上田は追加でビールとフルーツを取ろうとするが、あまりに素朴すぎるホステスが不満な野々宮は河岸を変えたい模様で、注文をキャンセルしようとする。

┃ お菓子

美和子の相談に乗るため、彼女の家を訪ねた上田。美和子は幼少の頃上田と会わなくなって以降の出来事を語り、上田に弟を探してくれるよう頼む。美和子はストーブをつけ、買い置きしてあるらしきお菓子(お菓子皿に入っている、中身不明)をこたつの上に出す。

┃ 上田家の朝食・野々宮家の朝食

上田家の朝食はご飯とおツユ。食事を取る場所はダイニング。上田は勤務先泊らしく不在。上田の妻・幸江(中村玉緒)と娘が在宅。弟・夏雄(川崎敬三)が朝食を食べに来ている。
野々宮家の朝食はこたつで取る模様。野々宮と妻・富子(楠トシエ)が上田家のうわさ話をしながら準備中。はっきりは写っていないが、メニューはごはん、みそ汁、おかず(けっこう何皿もある)。

┃ 給食で残ったパン

上田は深夜まで美和子の弟・研吉を探し歩いてクタクタ帰宅。しかしあまりに帰宅が遅かったため、夕飯は準備してもらえなかった。もう何もない、じゃあ買いに行ってくれ、もうお店やってないですよというすったもんだを経て、上田は娘が給食でお残しして持って帰ってきたパンを食べることに。上田は娘が赤いランドセルから出したコッペパンらしきパンにかぶりつく。

┃ トラック八百屋

上田家と野々宮家の近所(上田と野々宮は社宅住まい?)、線路端の高台みたいな場所に朝出店しているトラック八百屋。荷台に野菜をありえないほど満載している。キャベツが「立山黒部アルペンルートの雪の壁道路」なみに高く積まれている。

┃ チャーハン・スープ・ラーメン

上田は前衛芸術家(財津一郎)や前衛音楽家大泉滉)のアトリエを巡り、やっとのことで研吉を見つけ出す。彼はフーテンになっており、新宿のYOSAKOI系ゴーゴークラブでだらだらした日々を過ごしていた。上田はおなかをすかせた研吉を場末の中華屋へ連れて行く。必死でチャーハンとスープをかきこむ研吉。スープにはこしょうをハプパフかけている。上田はその様子にびっくりしながらラーメンをすすっているのであった。
このときの食器、チャーハンは八角形で足の高い皿、スープは白い小さな湯呑み風の鉢でレンゲ付きというのがいかにも街の中華屋風で良い。

┃ 列車内で松茸の七輪焼き

今日も上越線急行内を検札して回る上田。なんと車内で七輪で松茸をあぶっている人がいる。上田は火気厳禁と注意して松茸を没収するが、松茸はアッチアチ。とりあえず松茸をポケットにしまう(?)上田なのであった。

┃ フーテンカクテルとスリク

まただらだらとしたフーテン生活に戻ろうとする研吉を説得するため、上田は自らもロン毛カツラを装着&袖無しGジャンを着てフーテンになる。フーテン仲間たちはおもしろがって上田に「フーテンカクテル」と「スリク」を飲ませる。
フーテンカクテルとは酢・塩・こしょうなどその辺の調味料や各種酒類をミックスしまくった地獄カクテル。ぶくぶくと泡が立ち、グラスからスモークがもうもうと出ているのがあやしすぎる。
スリクはつまり「クスリ」のこと。上田はそうとは知らず水なしでボリボリ食べてしまい、少しラリってしまう。お味のほどは「ちょっとすっぱくて、梅干しみたいな味。噛まずに食べると別の味がする。酒の肴に良い」らしい。

┃ スナック菓子・りんご・大根

研吉を伴って上機嫌で帰宅した上田。しばらくこいつを泊めてやることにしたからと幸江に紹介するが、幸江は上田は頭がおかしくなったと思い込み、娘を野々宮家へ行かせて精神科医を呼んできてくれるよう頼む。
上田はひとまず研吉にクラッカーのようなスナック菓子を食べさせて、とおつまみのピーナッツを探索。
間もなく精神科医と野々宮夫人がやって来て、てんやわんやが巻き起こる上田家ダイニング。上田は前衛音楽家に仕込まれた芸(?)で「皿が割れる音がするとアオ〜ンと吠える」という謎の条件反射を習得しており、てんやわんや中にりんごが乗せられた皿が割れた拍子に変な叫び声を上げてしまって、ますます頭がおかしいと思われる。
そこにヒッピー扮装で大根ソードを携えた夏雄もやってきて、上田家の夜は大混乱となる。
確かこのあたりでハイミナール(睡眠薬がどうこうという話が出ていた気がするのだが、詳細を忘れてしまった。

┃ クリスマスディナー

研吉は美和子に再会し、心を入れ替えてまじめに生きて行くことを誓った。その彼を祝して、上田は研吉とそのガールフレンド・房子(城野ゆき)にレストランでのクリスマスディナーをプレゼント。しかもそれがそれぞれへ「6時にレストランへ来てくれ」と伝えておいて、実際行ってみると待っているのは上田ではなく研吉/房子というイキなはからいである。大きなクリスマスツリーやキラキラした飾りで彩られた素敵なレストランでのディナーをプレゼントされた二人は、上田に深く感謝した。

┃ 上田家のクリスマスパーティー

一方上田家。上田は残念ながら勤務で不在だが、幸江と娘、そして夏雄でささやかなクリスマスパーティーをしている。リンゴやバナナ、サラダ、びわ(巨大オリーブにも見えるが……)がテーブルに乗っているのが見える。そして幸江&夏雄はワイン(カッティングの入ったグラス)、娘はバヤリースオレンジで乾杯するのであった。

┃ 白ワイン

そして上田はというと、宿泊地の新潟でべろんべろんに酔っていた。野々宮と一緒にタクシーで宿舎へ帰る途中、ホテルの前で美和子と再会。彼女に誘われ、ホテルの豪華なスイートルームで感謝の乾杯……という夢を見ながらタクシーからずり落ち、野々宮をあわてさせてた。
夢の中の美和子&上田は、白ワインシャンパンかも)で乾杯していた。

┃ みかん

上田一家と研吉&房子カップルは、東海道新幹線勤務の夏雄が取ってくれた「初詣列車」で伊勢神宮へ年越し参りへ行くことに。東京16:30発で伊勢市22:14着という年末ダイヤで行くお宮参りに一家は大興奮。新幹線の中でも上田は具合が悪そうなお客さんや探し物をしているお客さんを心配するが、車掌として乗っている夏雄に「お兄さん今日はお客さんなんだから、みかんでも食べてなよ」と言われる。
ちなみに更生した研吉は、駅の売店に雑誌を搬入する仕事(鉄道弘済会)についている。この仕事の様子を撮ったカットで、彼がみかんをたくさん売っているキオスクに雑誌を搬入する様子が映されている。雑誌などを置いている倉庫は本当の国鉄の倉庫でロケしているっぽい。

┃ お雑煮とみかん

伊勢神宮のお参りをすませた一行はテレビの取材に捕まり、年明けすぐの全国各地の神社を多元中継する番組に出演。新潟の芸者置屋では、美和子がお雑煮やみかんを食べながら、その様子を優しく見守っているのであった。