大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『(秘)女郎責め地獄』地獄見世の女のひとり酒、女郎部屋の酒、大根、墓の供え物の大福、流しわかめ酒、景気付けの酒、弔い酒

(秘)女郎責め地獄 [DVD]
(秘)女郎責め地獄

最下級の売春宿街、地獄見世の掃き溜めの鶴・死神おせん(中川梨絵)。彼女は吉原時代にはその器量と道具で鳴らした女郎だったが、彼女と関係した男が相次いで三人死んだことから死神と恐れられ、いまでは地獄見世ですら客がつかないありさまだった。おせんはしばしば情夫・富蔵(高橋明)に頼まれて枕絵師・英斉(長弘)のモデルバイトをしていたが、今日のそれはただのモデルではすまされなかった。その帰り、おせんは晒し場で心中未遂の男女を見る。嘲笑する町民たちの間から見た生き残りの女の澄んだ目に、おせんは「きれいな目」とつぶやいた。そんな彼女を見ていた男・梅吉(堂下繁)はおせんを追って地獄見世までやってくる。


時代劇系ロマンポルノ。エンターブレイン系やアフタヌーンでありそうな和風ファンタジーチックな世界観と言えばいいだろうか。リアル指向の時代劇的な世界観ではなく、サブカルチャーにおいてイメージ上にのみ存在する「和風」を具現化したかのような世界観が見所。人形浄瑠璃を使用したイメージカットや鈴木清順調?の摩訶不思議な美術など、ヴィジュアル的な見所が多い。音楽も三味線やシタールなどの日本〜アジア系の弦楽器を使っており、雰囲気を盛り立てている。耽美的な要素が多いにも関わらず、中川梨絵のブッキラボーでがさつな演技は世界が情感に傾きすぎるのを押さえており、好ましい。

┃ 地獄見世の女のひとり酒

一流の遊郭でも通用するほどの美貌の持ち主ながら、「死神」という噂が立っているおせんには客がつかない。夜が深くなっても自分の部屋の前でつっ立っているばかりである。やっとのことで酔客を引っぱり来んだおせんはひと仕事終えた後、大きなとっくりからをかっ食らう。しかし、少し飲んだだけで中身は空っぽになってしまう。
どうも彼女はアル中気味らしい。
地獄見世は長屋になっており、女郎が各部屋の前に立って客を引く。各部屋は狭く、襖で仕切られているだけ。女郎たちは長屋を管理している親方への借金に縛られているが、映画の遊郭の設定でよくあるように、出歩きがまったく出来ないとかいうことはなく、比較的出歩きの自由がある放し飼い状態のようだ。

┃ 女郎部屋の酒

おせんは暇をもてあます女郎たちが溜まっている楽屋のような場所へ行く。花札賭博をしている者、ごろごろしている者などが狭い部屋の中にひしめいている。おせんは片隅にあったを一杯もらうが、その持ち主の女郎から厄がつくとアヤをつけられ、喧嘩になる。おせんは最下層の女郎たちにも軽視されているふしがあるらしい。

┃ 大根

情夫・富蔵が勝手に決めてきたバイト、枕絵師・英斉のモデル仕事に出かけたおせん。モデルのバイトというのは、豪華な部屋の中で上半身裸になり、手に巨大な鯉を持って「水瓶を持つ女神」みたいなポーズをするという仕事だった。いつもはこれで終わりなのだが、今日はそれだけでは終わらなかった。英斉の屋敷からの帰り、おせんは乞食3人組に誘拐され、急斜面に無数の墓石と地蔵が並ぶ墓場へ連れ込まれ、強姦される。この乞食たちは英斉が雇ったもので、彼は強姦されるおせんの姿を絵に描こうとしていた。
このとき乞食たちはなぜか腰に大根を下げていて、なんで大根??と思っていたところ、この大根はロマンポルノらしい活用をされていた。田中登、一応ちゃんと仕事してるんですね。あと、茶色いニワトリがコケーッと跳ね回っていた。

┃ 大福

英斉の「追加注文」は、富蔵も承知の上のことだった。彼はすぐそばでその様子を見守っていたのだった。さらに足下へ小判を投げつけられた富蔵は、英斉の注文に従っておせんを強姦した。富蔵は怒るおせんにやに下がるが、解放されたおせんは近くの墓に供えてあった大福を拾ってがぶりと食らい、彼を無視して地獄見世への道をとぼとぼと帰ってゆく。

┃ 流しわかめ酒

おせんは心中の晒し場で出会った男・梅吉になぜか惹かれるものを感じていた。彼は心中未遂の女・お蝶(山科ゆり)の兄だった。梅吉は浄瑠璃の人形師見習いという地獄見世にはふさわしくない身分ながら、お蝶の目が綺麗だと言ったおせんについてここまできたのであった。
そんな折、あれだけ無茶苦茶なことをした富蔵がヌケヌケを帰ってくる。当然おせんは激怒しているが、富蔵はそれにかまわず、持ち込んできた酒を彼女の秘所に吹きかけてすすった。これが世に言う流しわかめ酒である(いや、知りませんけど……)。
兵隊やくざ』で「へそ酒」ってのがあったな。『実録外伝 大阪電撃作戦』でも似たようなシーンがあった。

┃ 景気付けの酒

その後色々あって、富蔵は賭場でいかさまをしたことが露見し、博徒に刺されて死んでしまった。死んだもんはしょうがないので、用水桶を棺桶代わりする長屋一同。アバウト弔い!!!!! 長屋の親方(小泉郁之助)はその辺にいた奴(棺桶屋?)と一緒に用水桶棺桶を運ぶことに。ここで景気付けにまず一杯。彼らがエッサホイサと運んでいった先は崖の上。ここで景気付けをもう一杯。そしてここいらでいいかとばかり、親方は用水桶棺桶を崖から投げ落とすのであった。アバウト埋葬!!!!!!

┃ 弔い酒

一方、地獄見世ではおせんがひとり、富蔵の弔いをしていた。とっくりの上にオチョコを乗せ、その上に富蔵の死体から切り取った小指を立てて、それをサカナに酒をあおる。いくら自分勝手な憎い男とは言っても、おせんにとって富蔵はやはりかけがえのない男だった。そんな男を失ったおせんの心は哀しみに沈む…………………はずだったが!!!!!!!!