『ルバング島の奇跡 陸軍中野学校』葡萄酒、ビーフステーキ・山盛りごはん・葡萄酒のディナー、さつまいも、雑穀おにぎり、刺身、眠り薬をかけた食パン、茹でとうもろこしと蒸しまんじゅう
昭和19年春、見習士官・村上浩次郎(若林豪)は東部三十三部隊へ配属を命じられた。そこには「陸軍中野学校」と呼ばれる諜報員養成所で、軍部の中でもごく一部の者しか知らない、エリートだけが集められた極秘組織である。村上、菊地(千葉真一)、日高(夏八木勲)らは滝口中尉(菅原文太)のもと、“実戦”さながらの厳しい訓練に明け暮れる。やがて滝口はサイパンへ派遣され、学校は群馬へと疎開する。そこでは阪田中尉(室田日出男)によるさらに厳しい訓練が待っていた。戦況が刻々と悪化してゆく中、陸軍中野学校はついに卒業演習を迎える。その卒業演習とは、「刑務所の囚人解放」「要人暗殺」「飛行場の格納庫爆破」などまさに実戦そのものであった。
陸軍中野学校もの映画……というジャンルなのだろうか。菅原文太が教官をしているところまではかなり面白く、引き込まれたのだが、後半にいくにつれ何が言いたいのかわからなくなってくる。というか、多分、何かを言いたいというタイプの映画ではないんだろうな。てっきり中島貞夫監督『あゝ同期の桜』のように、戦争に運命を左右された若者たちの青春を描くという作品になるのかと思っていた。菅原文太のスリムな三つ揃スーツ&ハット姿の教官姿は大変にかっこよい。千葉チャン、若林豪、夏八木勲がゴッツイのでスレンダーさが際立っている。こんな文太教官が入学初日に「俺のことは先輩か兄だと思え!」と言って同じテーブルについてくれるという展開に、一体何が始まってしまうのかと思った。
┃ 葡萄酒
そんな陸軍中野学校への入学初日、千葉チャンが手みやげに持ってくるのが葡萄酒。どこかからくすねてきたものらしいが、戦時中なのにこんなものがホイホイある場所とは、ここは一体どこなのかといぶかしむ生徒たち。
┃ ビーフステーキ、白米、葡萄酒の豪華ディナー
食堂には彼らの歓迎のテーブルが整っていた。テーブルクロスがかけられたテーブルの上にはビーフステーキ(付け合わせ付き)、山盛りの白米ごはん、ワイングラスに注がれた葡萄酒など。
配給も厳しいこの頃にこんなごちそうが出るなんて、と驚く生徒たち。そこへ颯爽と入ってきたのが文太教官。教官であるにも関わらず生徒と同じテーブルにつき、彼らに料理が冷める前に食べるよう促す。食べ盛りでバクバク食う生徒たちに、文太教官は「その代わり明日から3日間断食!」と告げるのであった。
┃ さつまいも
地獄の訓練でお腹ぺこぺこな3日間、最終日の演習が終了し、宿舎に戻ってきた千葉チャンら。腹減ったー!とばかりに千葉チャンがまたどこからともなく山盛りのさつまいもを調達してくる。
面々は夢中でがっつくが、堅い性格の若林豪だけは「まだ3日目が終わったわけじゃない」と食べようとしない。そこへ入ってきたのが文太教官。みなビックリして直立不動の姿勢、でも口からサツマイモがはみ出ている。怒られるかと思った千葉チャンらだったが、文太教官は「君たちは食べ物を盗んででも生き延びなければいけない!」と激を飛ばすのであった。
┃ 雑穀おにぎり
やがて陸軍中野学校は疎開のため群馬県へ移る。新たな教官・室田日出男は卒業演習として夏八木勲ら2名に「宇都宮師団の飯塚中将を暗殺」という課題を出す。夏八木勲らは首尾よく飯塚中将の首根っこを引っ掴むことが出来たものの、騒がれたせいで追っ手に囲まれ、追われる身に。夏八木勲は命からがら実家の納屋へ逃げ込むも、お手伝いの女の子に見つかってしまう。夏八木勲は彼女にこれは特殊任務でやっていることで脱走ではない、食べ物を持って来てくれと頼む。彼女が台所ででっかいおにぎりを作っていると、老母がそれに気付き、息子が帰ってきていることを知る。老母は自ら納屋へおにぎりを持ってゆき、つかの間の親子再会となった老母と夏八木勲だったが、お手伝いの女の子は夏八木勲を支那人スパイの手先だと勘違いして地元の自警団に通報してしまった。
このおにぎりは白米ではなく、雑穀が混じったような茶色いものだった。時局の変化もあるが、中野学校の歓迎会では完全な白米が出ても、田舎の貧乏な家ではもう白米は食べられないということだろう。芸が細かい。