大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『まむしの兄弟 二人合わせて30犯』りんご、自販機から盗んだカップ酒、焼き肉とビール、みかん、おかゆとエビ料理とローストビーフ、新開地で捕ったうなぎ

まむしの兄弟 二人合わせて30犯 [DVD]
まむしの兄弟 二人合わせて30犯

またも刑務所から出所してきたゴロ政(菅原文太)と、彼を出迎えた不死身の勝(川地民夫)のまむしの兄弟。この新開地のトンチキ兄弟の弟・勝は、弁護士・本間(菅貫太郎)から「あなたの生き別れの母(しかも大金持ち)が死ぬ前に一目会いたい、10億の遺産を残したいと言っている」と告げられる。勝は本名「小澤勝彦」という名前で満州生まれ、終戦時に釜山の港で母とはぐれ、それからずっと母は勝彦を探していたというのだ。勝は驚き戸惑うが、政が母に会いに行くように説得し、政勝兄弟は芦屋の大邸宅に赴くことに……。

まむしの兄弟シリーズの7作目。
あいかわらずトンチキ兄弟がモグモグする焼き肉が食欲をそそる映画である。劇場で観たあと、どうしても肉を焼いた系の食べ物が食べたくなり、思わずアツアツジュージューの豚の味噌焼き丼を食べに行ってしまった。


┃ りんご

出所後5秒で刑務所前で映画の撮影をしていたロケ隊に飛び蹴りかまして捕まるというトンチキをさっそくかましたまむしの兄弟だったが、なんとか翌日には出所。リンゴをかじりながら神戸へ帰るのだが、途中でコソ泥娘&こまむし兄弟を追ってきたヤクザに絡まれた政は、ヤクザの口にリンゴを突っ込んでぶん殴るのであった。
1作目でも出所してすぐ商店街で果物をくすねる(というか、代金を払わず持って行く)シーンがあったかと思うが、甘いモンが食べたかったのだろうか。

┃ 自販機から盗んだカップ

まむしの兄弟と言えば忘れちゃならないのが「ガソリン」つまり酒である。
手先が器用な勝は道端のコップ酒自販機のコイン投入口にハリガネを突っ込み、ガチャンコガチャンコしてコップ酒を3本くすねる。そして兄弟はコップ酒を片手に新開地を千鳥足でうろうろする。

┃ りんご(2)

ヤクザに捕まったところをコソ泥少女・ジュン(東三千)に助けられた政と勝は、ジュンを「まむしの兄弟」に入れることを承諾させられる。しかしそんなこと忘れたふりして三島ゆり子&女屋実和子のアパートにしけ込んでいるが、気がついたらジュンが枕元にリンゴをかじりながら立っている。ハリガネで勝手に鍵を開けて入ってきたらしいのだ。彼女はまむりの兄弟に入れるという約束を履行させ、政勝兄弟にあるシノギを持ちかける。

┃ 焼き肉とビール

ジュンと政勝がシノギ=殴り屋稼業の打ち上げをしているのが定番・焼き肉屋。粗末な卓上コンロでジュージュー焼かれているだけの肉がものすっっっ……ごくおいしそうだ。正直な話、若大将シリーズの田能久のすき焼きは食べてはみたいものの、そんなにおいしそうに見えないのだが、東映の焼き肉は犬焼き肉だろうがやたらおいしそうに見えるのがすばらしい。
ジュンを兄弟に入れることになんの依存もなさそうな政に対して、彼女が兄貴との中に割って入ってくることは不服らしい勝がジュンにビールを注がされるのちょっと哀れ。
なお、ビールの銘柄はキリンビール

┃ みかん

自分の出生と、いないと思っていた母が自分を探していることを告げられた勝は、なぜか部屋のスミで浮かない顔をしている。政や三島ゆり子&女屋実和子は勝の母が見つかったことを大喜びしてお祝いの夕餉の支度をしているのに、勝はひとりみかんをモグモグ。自分ひとりだけお母さんが見つかったことを気にしているのである。このとき、ジュンもみかんを食べている。

┃ おかゆとエビ料理とローストビーフ

勝のお母さんに会いに、芦屋の高級住宅街にやって来た政勝兄弟。勝のお母さんは予想以上の超大金持ちだった。食堂で摂るディナーでは、エビ料理とローストビーフが銀の大皿に乗せられて出される。にも関わらず、お母さんが食べているのはおかゆ。胃腸が弱っているため、医者から普通の食事を禁じられているらしい。

┃ 新開地で捕ったうなぎ

いつもおかゆしか食べていないお母さんを気の毒に思った政は、新開地のうなぎ釣り屋でうなぎを釣……ではなくバケツですくってくる(うなぎプールに踏み込んでバケツで総ざらえ)。勝と一緒に庭でうなぎを調理して、蒲焼きをお母さんに食べさせる。

このとき政がうなぎを背開きにしているのは何故だろう。関西では普通うなぎは腹開きと言われているが、うなぎなんて普段食べたことがないからどっちから開くかわからなかったということだろうか。
うなぎの頭をつけたまま、まるまる焼くというのはちゃんと関西流。こういうふうに焼かれているのは見たことあったってことなのかな?

また、政はお母さんに精をつけてもらおうと、うなぎの生き血をコップに入れて渡すのであった。

┃ おかゆ(2)

弁護士・本間に家から出ていって欲しいと言われた政。弟分の幸せを思い、彼は身を引くことに。ドアの隙間からお母さんの居室を覗くと、勝と坊ちゃんがお母さんの看病をしている。楽しそうにおかゆをお母さんに食べさせる勝を見て安心した政は、追いすがる勝を振り払って屋敷を後にする。

┃ 焼き肉(2)

勝と別れ、寂しそうな政。ジュンと焼き肉屋に来ても、せっかく焼けている肉に箸をつけようともしない。