大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『ある脅迫』お銚子の酒


ある脅迫

新潟の地方銀行直江津支店の次長・滝田恭助(金子信雄)は本店の業務部長への栄転を数日後に控え、料亭の広間では彼の送別会が開かれていた。一方、帳場で燗の番をしている男・中池又吉(西村晃)は古くからの滝田の友人ながら、出世街道を邁進する滝田とは裏腹に万年平社員であり、いつも自信なさげなオドオドした表情を浮かべていた。彼らの人生はそれぞれまったく別のレールへと分かれてゆくかに思われたが、宴会の帰り道、滝田は東京から来たというチンピラ・熊木伸二(草薙幸二郎)から脅迫を受ける。彼は滝田が女関係で金をゆすられ、その金を作るために浮貸しをしていることを掴んでおり、証拠となる偽造印鑑の控え書類まで持っていた。熊木は滝田に明後日午前6時までに300万円の金を用意しろ、さもなくばこの件を本店と新聞社に通告すると告げる。滝田は恩を売ったこのある取引先企業などに融資を頼むが、不首尾に終わる。追いつめられた滝田は、中池を利用した最後の手段に出ることに……


短編サスペンス。脚本や演出の完成度が高く、金子信雄西村晃の演技力がさらなる説得力を添える。カトンボのようにちょっと風が吹けば死にそうな感じだった気弱男・西村晃金子信雄の策謀に対して変化してゆくさまが見物。

┃ お銚子の酒

金子信雄の送別会の夜、西村晃は送別会の行われている座敷には行かず、料亭の帳場で熱燗の番をしている。そこにやって来たのが妹の白木マリ。実は白木は金子に捨てられた過去があり、金子に恨みを抱いている。その上、金子の親友である兄・西村晃が金子とは真反対にヨワヨワしているのを苦々しく思っていた。白木はこんなのは私たちに任せておけばいいと言うが、西村は「ぼくはここいいるのが落ち着くんだ」となおも燗番をしており、しかしながら要領が悪いため酒をひっくり返してしまったりするのであった。