大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『明治天皇と日露大戦争』兵士と乃木将軍と天皇の食事

明治天皇と日露大戦争 [DVD]
明治天皇と日露大戦争

  • 1957年/新東宝/カラー/113分
  • 監督=渡辺邦男
  • 脚本=館岡謙之助
  • 出演=嵐寛寿郎、阿部九洲男、高田稔、武村新、藤田進、岬洋二、江川宇禮雄、広瀬恒美

明治37年、ロシヤの極東侵略政策に御前会議は緊迫を呈していた。軍部や民間からは開戦も辞さずとの声が高まっていたが、明治天皇嵐寛寿郎)は慎重な交渉を続けるよう言い渡した。しかしロシヤ側からの回答はなく、1904年2月8日、旅順港への奇襲攻撃にて日露戦争は開戦した。


日露戦争をモチーフとした戦争映画。明治天皇役の嵐寛寿郎をはじめ、丹波哲郎連合艦隊参謀長)、宇津井健(広瀬少佐)、高島忠夫(乃木保典)、天知茂(代議士)などキャストが豪華。
特筆すべきはシネマスコープの大画面を使った超ウルトラゴージャスな戦場シーン。最近の映画で「スクリーンいっぱい、地平線まで埋め尽くす人々の群れ……のCG」というのをよく見るが、本作はそれが本物の人間で再現されている。203高地のシーン、望遠で広大な荒野を捉えているのだが、その際、シネマスコープの画面いっぱいに人がうじゃうじゃしているのには「スゲーーーーーーーーーーー!」の一言に尽きる。この点においてはある意味東映の『二百三高地』よりすごい。


┃ 兵士と乃木将軍と天皇の食事

戦場にいる乃木将軍(林寛)のもとへ、最前線へ出陣することになった次男・保典(高島忠夫)が訪ねてくるシーンがある。親子は一緒に食事をするのだが、乃木将軍がご飯、たくあん、お新香という粗末な食事をしているのを見た保典はそれを心配する。彼が持参してきていたお弁当もそれと同じ内容だったからである。つまり将軍も兵士と同じものを食べていたのだ。さらに場面は移って皇居。明治天皇嵐寛寿郎)の食事シーンが映る。ここでアラカン天皇が食べているのがこれまたご飯、たくあん、お新香。アラカン天皇もまた戦場にいる兵士と同じ食事をしている、というお話。もちろん取り巻きはもっとしっかりしたものを食べて欲しいとやきもきしているのだが、お許しが出ないため、粗末な食事を出しているのであった。