大衆映画食堂

昭和の日本映画に登場する食べ物たちの記録

『七人の刑事 終着駅の女』1袋200円のバナナ・山積みのみかん、お茶、取り調べのどんぶり、あんぱん、上野駅地下道のすし屋、宿直室のお茶、オレンジジュース、ケーサツの冷えたお茶、するめいか・らっかせい

七人の刑事 終着駅の女

出稼ぎ労働者やスキー客でごった返す上野駅16番線——東北線のホームで身元不明の女の死体が発見される。彼女は北上行きの切符を持っていた。第1発見者の駅員の証言により死体のそばにあった白い鞄が紛失していることが判明。警視庁から台東署に派遣された赤木係長(堀雄二)、沢田部長刑事(芦田伸介)、杉山刑事(菅原謙二)ら7人の刑事は、夜行列車の待ち列に代理で並ぶ「ショバ屋」が事件を目撃している可能性が高いとして、16番線を縄張りにしていたショバ屋を探す。一方、上野駅事務所内に設置された捜査本部には、被害者に心当たりがあるという人々が次々と訪れていた。しかし被害者の元は一向に割れない。あるとき、ふさ子(笹森礼子)という女が捜査本部を訪ねてくる。ところが彼女は刑事たちが取り込んでいて待たされているあいだに帰ってしまう。不審に思った久保田刑事(天田俊明)は彼女を尾行するが……

人気テレビドラマの映画化、刑事もの。
白黒でコントラストが強く粒子の粗い映像。音楽は劇伴が使われず、SEのみ。手ぶれやボケ、露出不足/過多も多く、ドキュメンタリー感を狙っていると思われる。ストーリーも激渋。刑事7人中4人が知らない俳優さんだったため上映中に誰が誰か判別できず、以下曖昧な表記が多くなっています。すみません。

┃ 1袋200円のバナナ・山積みのみかん

刑事のひとりが事件の目撃者を探してキオスクで聞き込みをするシーン。上野駅16番線のキオスクでは1袋200円のバナナや山積みのみかんが売られている。きっと夜行列車の乗客たちが長い旅路のおともに買ってゆくのだろう。

┃ お茶

上野駅事務所内に捜査本部が設置され、赤木係長らは台東署から派遣された山越刑事(大滝秀治)とともに捜査活動を開始。16番線のキオスクで聞いた情報から、16番線を縄張りにしていたショバ屋(夜行列車などの席取りの行列に代理で並ぶ仕事)が事件を目撃している、あるいは関与している可能性があるとして、ショバ屋を探し出して取り調べる。そのショバ屋の取調中、水玉湯呑みでお茶が出される。

↑ うちにある水玉湯呑み。

┃ 取り調べのどんぶり

事件の詳細を知っているというショバ屋が捜査本部を訪ねてくる。腹が減っているらしいので杉山刑事がどんぶりものを取ってやろうとするが、そこへ偶然入ってきた山越刑事がいきなり大声を出してショバ屋を追い払う。なんとそのショバ屋は取調中の食事おごり狙いのタカリ常習犯だった。台東署では有名で、もう誰も相手をしないという。それなら逮捕してくれ(豚箱は食事が出てシャバにいるよりいい環境だから)というショバ屋。あきれたものというか、社会のひずみの悲哀というか……。
(どんぶりを取ってやろうとした刑事、芦田伸介だったかも。)

┃ あんぱん

被害者の身元照会に来る人々への対応と、入った情報を元にした足を使っての捜査と、多忙を極める刑事たち。何か訳ありらしきみずぼらしい身なりの女・ふさ子が来ているにも関わらず、なかなか対応できないでいる。
置き引きにあった白いバッグがついに発見され、その中身を検分。その最中、急いで出先から戻ってきたらしき刑事のひとりが、紙袋からあんぱん(多分。形状から判断)を出して食べている。落ち着いて食事をするひまもないようだ。

┃ 上野駅地下道のすし屋

ふさ子は何故か刑事たちと話をしないうちに帰ってしまう。しかし、不審に思った久保田刑事は密かに彼女を尾行。するとふさ子は上野駅地下道にある小汚い寿司屋の勝手口に入っていった。久保田刑事が外から様子を伺っていると、男の怒鳴り声とドンガラガッシャーンという音が聞こえた。驚いた久保田刑事は思わずドアを開けるが、中からサンピン感溢れる下卑たオヤジが出て来て、開店はまだだよと言う。
この寿司屋には、食品サンプルを飾るようなショーウィンドーがある。実際に何が置かれているかは、映像が粗いためよく見えなかった。っていうか、そもそもこの店が寿司屋かどうか自体、曖昧……。
他のシーンでも地下道の飲食店街、ガード下の飲屋街などの上野の煤けた景観が数多く映る。高度成長期半ばの作品なので、やろうと思えばもっと小綺麗な場所を設定することもできたろうが、そこから取り残された世界を描くべく、舞台を上野に選んだのだろうか。

1013.1.11追記 この店はやはり寿司屋だった……。e様よりお寿司の値段の情報提供を頂きました。寿司120円、ちらし140円だったそうです。寿司が120円に比べ、バナナ1袋200円の高級感よ。当時はバナナは高級品で、1本あたり30〜50円したそうです。

┃ 宿直室のお茶

老婆が駅だか台東署だかの宿直室で休ませてもらっている。
もしかして殺された女は自分の娘ではないかと捜査本部を訪ねて来た老婆は、東北から娘を探しに上京してきたらしい。娘は出稼ぎに東京へ出て仕送りをしてくれていたが、病気で臥せっていた夫が娘に仕送りの催促をしてしまったため、それ以来娘は連絡をよこさず、行方が分からなくなってしまったらしいのだ。そして、老婆の夫はそのことを悔やみながら死んだという。刑事はその話を聞き、老婆が持っていた娘の写真から、彼女が最後に勤めていたのは赤坂の喫茶店ではないかと推測。赤坂署に連絡を取ってくれる。
このとき刑事(芦田伸介だったかな〜……)は宿直室備え付けの湯呑みで老婆にお茶を一杯入れてやっている。

┃ オレンジジュース

状況からしてヤクザ関係者の犯行である可能性が高いと睨んだ捜査本部は、地元ヤクザ・大場組(うろ覚え)の組長(大森義夫)を呼び出す。組長は、犯人は自分のところの三下・木島(平田大三郎)で、彼を出頭させようと説得したが逃げられたと言う。
しかし、実情はこうだった。捜査本部に来ていた女・ふさ子は大場組の幹部の情婦で、売春宿で働かされていた。そして、上野駅で殺された女というのもまたふさ子が働く旅館・松葉屋で売春させられており、そこから逃げようとしたために情夫である壷振りに殺された。ふさ子はそのために捜査本部に行ったのだが、実情を話す前に帰ってきてしまった。壷振りは組では稼ぎを作る重要な人物なので、出頭はさせられない。木島は壷振りの代わりに自首させられようとしている。
そして今、ふさ子は木島と駆け落ちしようとしていた。待ち合わせは上野駅の地下食堂街。ふさ子はなんとか荷物をまとめて旅館を抜け出し、先に地下食堂へ入った。食堂はかなり広い。セットではなく、実際の場所でロケしていると思う。セットで上野駅の食堂を再現している映画はたまにあるが(『男はつらいよ』とか)、本物は初めて観た。大型スーパーのフードコートとか、大規模な公共施設や大学の大型カフェテリアみたいな、無機質で冷たく、安い机と椅子がずうっと奥まで並んでいる感じ。
ふさ子はオレンジジュース(瓶入りをコップについでいる)を飲んで木島を待つが、木島は現れない。なぜなら地下食堂の入り口で兄貴分が見張っていたため、入るに入れなかったのだ。

┃ ケーサツの冷えたお茶

上野駅を張っていた沢田部長刑事らの活躍で、大場組の兄貴分と真犯人の壷振りは逮捕される。捜査本部に引っ張られたがそれでも生意気な態度を続ける彼らに、杉山刑事は「まー、ケーサツの冷えたお茶だけでも飲んでいきなよ」とヤカンに入れてあったお茶を入れてやるのだった。
(このシーン、全体的にうろ覚え。冷えたお茶を出すのは大場組組長に対してだったかも……)

┃ するめいか・らっかせい

こうして上野駅の女性刺殺事件は解決したが、娘を探しに来た老婆、家出した娘を探しまわっている夫婦などは結局目的を果たせないまま帰っていった。唯一よかったのは、東京へ仕入れに来た東北の衣料品店(?)の夫婦が上野駅ではぐれてしまい、旦那のほうが大慌てて遺体の照会に来たが、「うちの嫁はもっとべっぴん」と勝手なことを言って妻の捜索願を出したいとせがんでくるも、実は妻のほうが先に彼の捜索願を出していたことでアッサリ解決&再会できたことくらいか。
上野駅の喧噪やインタビュー音声をバックに、刑事たちが簡単な打ち上げ(?)をしている様子が映し出される。みな一様に何かまだしこりが残っているような表情をしたままだ。歓談することもなく、それぞれの席でするめをチビチビ食べたり、らっかせいの袋を開けて中身をざらっと出したりしている。

『(秘)女郎責め地獄』地獄見世の女のひとり酒、女郎部屋の酒、大根、墓の供え物の大福、流しわかめ酒、景気付けの酒、弔い酒

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最下級の売春宿街、地獄見世の掃き溜めの鶴・死神おせん(中川梨絵)。彼女は吉原時代にはその器量と道具で鳴らした女郎だったが、彼女と関係した男が相次いで三人死んだことから死神と恐れられ、いまでは地獄見世ですら客がつかないありさまだった。おせんはしばしば情夫・富蔵(高橋明)に頼まれて枕絵師・英斉(長弘)のモデルバイトをしていたが、今日のそれはただのモデルではすまされなかった。その帰り、おせんは晒し場で心中未遂の男女を見る。嘲笑する町民たちの間から見た生き残りの女の澄んだ目に、おせんは「きれいな目」とつぶやいた。そんな彼女を見ていた男・梅吉(堂下繁)はおせんを追って地獄見世までやってくる。


時代劇系ロマンポルノ。エンターブレイン系やアフタヌーンでありそうな和風ファンタジーチックな世界観と言えばいいだろうか。リアル指向の時代劇的な世界観ではなく、サブカルチャーにおいてイメージ上にのみ存在する「和風」を具現化したかのような世界観が見所。人形浄瑠璃を使用したイメージカットや鈴木清順調?の摩訶不思議な美術など、ヴィジュアル的な見所が多い。音楽も三味線やシタールなどの日本〜アジア系の弦楽器を使っており、雰囲気を盛り立てている。耽美的な要素が多いにも関わらず、中川梨絵のブッキラボーでがさつな演技は世界が情感に傾きすぎるのを押さえており、好ましい。

┃ 地獄見世の女のひとり酒

一流の遊郭でも通用するほどの美貌の持ち主ながら、「死神」という噂が立っているおせんには客がつかない。夜が深くなっても自分の部屋の前でつっ立っているばかりである。やっとのことで酔客を引っぱり来んだおせんはひと仕事終えた後、大きなとっくりからをかっ食らう。しかし、少し飲んだだけで中身は空っぽになってしまう。
どうも彼女はアル中気味らしい。
地獄見世は長屋になっており、女郎が各部屋の前に立って客を引く。各部屋は狭く、襖で仕切られているだけ。女郎たちは長屋を管理している親方への借金に縛られているが、映画の遊郭の設定でよくあるように、出歩きがまったく出来ないとかいうことはなく、比較的出歩きの自由がある放し飼い状態のようだ。

┃ 女郎部屋の酒

おせんは暇をもてあます女郎たちが溜まっている楽屋のような場所へ行く。花札賭博をしている者、ごろごろしている者などが狭い部屋の中にひしめいている。おせんは片隅にあったを一杯もらうが、その持ち主の女郎から厄がつくとアヤをつけられ、喧嘩になる。おせんは最下層の女郎たちにも軽視されているふしがあるらしい。

┃ 大根

情夫・富蔵が勝手に決めてきたバイト、枕絵師・英斉のモデル仕事に出かけたおせん。モデルのバイトというのは、豪華な部屋の中で上半身裸になり、手に巨大な鯉を持って「水瓶を持つ女神」みたいなポーズをするという仕事だった。いつもはこれで終わりなのだが、今日はそれだけでは終わらなかった。英斉の屋敷からの帰り、おせんは乞食3人組に誘拐され、急斜面に無数の墓石と地蔵が並ぶ墓場へ連れ込まれ、強姦される。この乞食たちは英斉が雇ったもので、彼は強姦されるおせんの姿を絵に描こうとしていた。
このとき乞食たちはなぜか腰に大根を下げていて、なんで大根??と思っていたところ、この大根はロマンポルノらしい活用をされていた。田中登、一応ちゃんと仕事してるんですね。あと、茶色いニワトリがコケーッと跳ね回っていた。

┃ 大福

英斉の「追加注文」は、富蔵も承知の上のことだった。彼はすぐそばでその様子を見守っていたのだった。さらに足下へ小判を投げつけられた富蔵は、英斉の注文に従っておせんを強姦した。富蔵は怒るおせんにやに下がるが、解放されたおせんは近くの墓に供えてあった大福を拾ってがぶりと食らい、彼を無視して地獄見世への道をとぼとぼと帰ってゆく。

┃ 流しわかめ酒

おせんは心中の晒し場で出会った男・梅吉になぜか惹かれるものを感じていた。彼は心中未遂の女・お蝶(山科ゆり)の兄だった。梅吉は浄瑠璃の人形師見習いという地獄見世にはふさわしくない身分ながら、お蝶の目が綺麗だと言ったおせんについてここまできたのであった。
そんな折、あれだけ無茶苦茶なことをした富蔵がヌケヌケを帰ってくる。当然おせんは激怒しているが、富蔵はそれにかまわず、持ち込んできた酒を彼女の秘所に吹きかけてすすった。これが世に言う流しわかめ酒である(いや、知りませんけど……)。
兵隊やくざ』で「へそ酒」ってのがあったな。『実録外伝 大阪電撃作戦』でも似たようなシーンがあった。

┃ 景気付けの酒

その後色々あって、富蔵は賭場でいかさまをしたことが露見し、博徒に刺されて死んでしまった。死んだもんはしょうがないので、用水桶を棺桶代わりする長屋一同。アバウト弔い!!!!! 長屋の親方(小泉郁之助)はその辺にいた奴(棺桶屋?)と一緒に用水桶棺桶を運ぶことに。ここで景気付けにまず一杯。彼らがエッサホイサと運んでいった先は崖の上。ここで景気付けをもう一杯。そしてここいらでいいかとばかり、親方は用水桶棺桶を崖から投げ落とすのであった。アバウト埋葬!!!!!!

┃ 弔い酒

一方、地獄見世ではおせんがひとり、富蔵の弔いをしていた。とっくりの上にオチョコを乗せ、その上に富蔵の死体から切り取った小指を立てて、それをサカナに酒をあおる。いくら自分勝手な憎い男とは言っても、おせんにとって富蔵はやはりかけがえのない男だった。そんな男を失ったおせんの心は哀しみに沈む…………………はずだったが!!!!!!!!

『帝銀事件 死刑囚』「赤痢の予防薬」、酒、コーヒー、菓子・もち・お茶・酒、アイスコーヒー・りんご、泊まり込み先旅館の朝食、すいか、かき氷、ウィスキー、酒とつまみ、うどん、お茶、サントリーの角瓶

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昭和23年1月26日の15時すぎ、豊島区の帝国銀行椎名町支店に現れた厚生技官を名乗る男。その男が銀行員たちに「赤痢の予防薬」と称して飲ませた薬は青酸系の毒物だった。これにより行員12名が死亡し4名が重症、犯人はその混乱に乗じて現金・証券類18万円を奪い逃走。これが「帝銀事件」である。昭和新報記者・大野木(鈴木瑞穂)、笠原(庄司永建)、武井(内藤武敏)らはさっそく取材に走るが、あまりに的確すぎる手口や民間では手に入りにくい毒物を使っていることから、大野木らは犯人は軍関係者……戦時中満州で生体実験を行っていたという731部隊と何らかの関係があるのではないかと疑いはじめる。ところが小樽で平沢貞通(信欣三)という画家が容疑者として逮捕されたという情報が入り……


帝銀事件をモチーフとした社会派映画。事件記者たちの動きが中心となっているので事件のあらましが取材がてら詳細に説明され、内容を理解しやすい。信欣三は熱演すぎて本当に錯乱した人に見える。
登場する食べ物で季節の変遷がわかるようになっているのがポイント。


┃ 「赤痢の予防薬」

帝国銀行椎名町支店に現れた厚生技官・杉浦豊を名乗る男が行員らに赤痢の予防薬」と称して飲ませた毒物。透明の液体の中に白い沈殿がある第1薬とその1分後に飲む第2薬に別れていた。犯人は第1薬は歯の琺瑯質を痛めるため舌を突き出して飲むようにと指示し、実際にやってみせ、行員全員分をピペットで湯呑みに取り分けた。行員たちは訝しんだが男の指示に従ってその薬を飲んでしまう。
男は無事だったのに行員たちが被害にあったトリックは、使用された毒物は油と混ぜると比重の違いで下に沈み、無害な油は浮いてくるので、犯人がパフォーマンスで飲むときは油の部分を飲めばいいというもの。
後々、この毒物が民間では手に入らない青酸化合物であること、致死量ギリギリの分量であったこと、第1薬は遅効性であり、その毒が効き始めるまでその場にとどめさせる目的で第2薬の服用を命じていたこと(なので第2薬そのものに意味があるわけではない。実際には水だったという設定だったかな)、その第1薬は戦時中陸軍が研究していた毒薬(=集団自決用の毒薬。即効性だと最初に飲んだ人の苦しみようを見てしまったら後で飲む人が怯えて飲めなくなるため、効いてくるまでに数分かかるという遅効性だった)と関連がある可能性が存在することなどが発覚し、毒物の取り扱いに詳細な知識がある者が犯人ではないかという疑いが濃厚になる。

┃ 酒

事件の急報を受け、警察署内の記者クラブに昭和新報の記者たちが集結。デスク・大野木(鈴木瑞穂)、武井(内藤武敏)、阿川(井上昭文)らは湯呑みでを飲みながら取材方針について打ち合わせをする。

┃ コーヒー

しばらくして、事件の生存者・正枝(笹森礼子)が退院。武井と阿川は喫茶店で彼女から詳しい話を聞き出そうとする。わりと広めな昭和の純喫茶、テーブルの上にはコーヒー

┃ 菓子・もち・お茶・酒

警察の捜査会議に密偵を忍び込ませた昭和新報、隣の刑事に「鉛筆を貸してくれ」と言われて貸した鉛筆が昭和新報の名入りだったため、見つかって大騒ぎになる。一方残りのメンバーは泊まり込み先の旅館で宴会(?)をしている。お膳の上にはかりんとうのような菓子・もち・お茶・酒など。

┃ アイスコーヒー・りんご

犯人と思われる人物の写真を生き残りの被害者に見せているときに出されているもの。アイスコーヒー、切ったりんご。このあたりちょっとうろ覚え。

┃ 泊まり込み先旅館の朝食

昭和新報泊まり込み先旅館の朝食。お膳の上にご飯を盛った茶碗がたくさん乱雑に並んでいて、おかずが所々に置いてある。あらかじめ全員分盛ってあって、準備が出来た人から適当に席について食べるというシステムの模様。メニューはご飯、小鉢っぽいもの、魚らしきもの。小鉢と魚の数、絶対足りてない。適当につつきあうのか。


┃ すいか

小樽で平沢貞通(信欣三)という画家が逮捕され、東京に護送されてくるという情報が入る。記者たちは東京にある平沢の自宅に急行。妻と娘は平沢がそんなことをする心当たりはないという。女中が細かく切ったすいかのようなものを出してくれる。

┃ かき氷

生き残り被害者の首実検では、平沢が犯人である可能性がどうも低いようだった。昭和新報はこれとは別途に731部隊の生き残りを当たっていた。毒物の内容や取り扱い状況からして、戦時中に毒物を研究していた陸軍関係者……731部隊関連の人物でないかと推測したためだ。後者のほうが疑いが濃いという判断から、昭和新報編集室は今後の記事の方針立てで大もめしていた。季節はもう盛夏(8月下旬)になっていた。記者が冷たいものを欲しがって、デスクの机の上にあったかき氷をパクパク食べている。

┃ ウィスキー

デスク・大野木はGHQに呼び出され、731部隊を探るのはやめるように圧力をかけられる。米軍将校についてきた通訳が意気込む大野木を懐柔しようと、ウィスキーをすすめてくる。

┃ 酒とつまみ

当初は一切の取材を拒否していた731部隊の生き残り将校(佐野浅夫)が昭和新報の意図を理解してくれ、重要な情報を提供してくれたにも関わらず、報道ができない状況に追い込まれた昭和新報。酒とつまみをお膳の上に出して今後の方針について話し合っているが、記者間で意見が割れ、取っ組み合いの大げんかに発展。つまみが吹き飛ぶ。

┃ うどん

またもや昭和新報の編集会議、今度は旅館ではなく、記者クラブ内か本社社内。うどんをすすりながら話を聞いている記者がいる。

┃ お茶

平沢が自白したとの情報にざわめく昭和新報。しかし、平沢の自供は事件の実際のあらましとはほど遠いものだった。面会に来た義弟に、平沢はを一杯すすって「もう一度お前に会いたかったから嘘の自供をした」と答える。

┃ サントリーの角瓶

裁判では平沢は有罪、死刑の判決が出る。平沢側は高裁に控訴するもここでも死刑判決、さらに最高裁に上告したが棄却され、死刑が確定する。事件発生から7年半の歳月が経過していた。
昭和新報の記者たちは取材が一段落したということで簡単な打ち上げをするが、乗り気な者は誰もいない。記者の誰もが、昭和新報が陸軍関係者の取材を続け報道していたなら世論が変わり、判決も変わったかもしれないと感じていたからだ。
この事件により、平沢の家族は世間から文字通り石を投げつけられ隠遁生活を余儀なくされたばかりか、彼の娘は世間の目を逃れるためアメリカへ長期渡航することになる。本作が公開された時点では平沢は存命だったが、その後刑の執行を待たずして獄死した。
打ち上げのシーンでは、記者のひとりがサントリーの角瓶のラベルをはがしたやつを持っている。ラベルがはがされている理由は不明。

『喜劇 初詣列車』列車内でお菓子やジュース、弁当(鯛めし200円)、「CLUB KATOREYA」でビール、お菓子、上田家の朝食・野々宮家の朝食、給食で残ったパン、トラック八百屋、チャーハン・スープ・ラーメン、列車内で松茸の七輪焼き、フーテンカクテルとスリク、スナック菓子・りんご・大根、クリスマスディナー、上田家のクリスマスパーティー、白ワイン、みかん、お雑煮とみかん

喜劇 初詣列車 [DVD]
喜劇 初詣列車

上田新作(渥美清)は上越線で勤務する国鉄車掌である。今日も上越線はスキー客で超満員。越後湯沢で大方のスキー客が降りたところで、上田は小学校時代の同級生・美和子(佐久間良子)が客として乗っているのを発見する。新潟地震で父母を失った美和子は芸者となって弟を支えていたが、東京の印刷工場へ出稼ぎに行った弟の行方がわからなくなり、弟を探しに上京していたらしいのだ。同情した上田は、休暇日に印刷工場や若者のたまるゴーゴークラブを訪ねて回り、弟・研吉(小松政夫)を探すことにする。

能天気なお正月映画。
「列車」というのはだだの言葉のアヤだと思っていたが、駅舎や列車の映像がふんだんに使われており、鉄道成分がわりと濃い作品だった。小松政夫が泥酔した渥美清をタクシーに乗せ、運転手に「この住所まで送ってやって」と名刺渡してタクシーを発車させたら、向こう側のドアから渥美清が降りちゃってて敬礼してる、というシーンに腹がよじれるほど笑った。


┃ 列車内でお菓子やジュース

スキー客で超満員の上越線夜行急行内(車両タイプは165系、らしいです)。通路にまでたくさんの人が立っているので、検札に回っている上田はちょっと進むのにもひと苦労だが、スキー客の若者たちは持ち込んだお菓子やジュースを手にゆったり中。窓際のテーブルには、みかんと三越の包み紙でラッピングされた何かが置かれている。クリームをたっぷり挟んだクッキーのようなものを食べている女の子がいるのが気になった。

┃ 弁当(鯛めし200円)

越後湯沢を過ぎてスキー客がいなくなった車内をのんびり回っていた上田は、小学校の同級生だった美和子が乗っていることに気づく(美和子は新潟在住なので、終点の新潟まで乗車)。お弁当買ってきましょうかと気遣う上田に、美和子は「さっき買いましたから」と断る。すると後ろの方に乗っていたオヤジ(どら焼きみたいなのを食っている)が上田を呼びつけ、「弁当買って来て!」と言いつける。上田は「隣で買えますから(うろ覚え)。鯛めし200円!」とオヤジをスルー。オヤジは怒るでもなく、どら焼きを食べ続けるのであった。

┃ 「CLUB KATOREYA」でビール

今日は新潟泊の上田とその先輩・野々宮(西村晃)。二人は繁華街へ繰り出し、「CLUB KATOREYA」でビールを飲む。上田は追加でビールとフルーツを取ろうとするが、あまりに素朴すぎるホステスが不満な野々宮は河岸を変えたい模様で、注文をキャンセルしようとする。

┃ お菓子

美和子の相談に乗るため、彼女の家を訪ねた上田。美和子は幼少の頃上田と会わなくなって以降の出来事を語り、上田に弟を探してくれるよう頼む。美和子はストーブをつけ、買い置きしてあるらしきお菓子(お菓子皿に入っている、中身不明)をこたつの上に出す。

┃ 上田家の朝食・野々宮家の朝食

上田家の朝食はご飯とおツユ。食事を取る場所はダイニング。上田は勤務先泊らしく不在。上田の妻・幸江(中村玉緒)と娘が在宅。弟・夏雄(川崎敬三)が朝食を食べに来ている。
野々宮家の朝食はこたつで取る模様。野々宮と妻・富子(楠トシエ)が上田家のうわさ話をしながら準備中。はっきりは写っていないが、メニューはごはん、みそ汁、おかず(けっこう何皿もある)。

┃ 給食で残ったパン

上田は深夜まで美和子の弟・研吉を探し歩いてクタクタ帰宅。しかしあまりに帰宅が遅かったため、夕飯は準備してもらえなかった。もう何もない、じゃあ買いに行ってくれ、もうお店やってないですよというすったもんだを経て、上田は娘が給食でお残しして持って帰ってきたパンを食べることに。上田は娘が赤いランドセルから出したコッペパンらしきパンにかぶりつく。

┃ トラック八百屋

上田家と野々宮家の近所(上田と野々宮は社宅住まい?)、線路端の高台みたいな場所に朝出店しているトラック八百屋。荷台に野菜をありえないほど満載している。キャベツが「立山黒部アルペンルートの雪の壁道路」なみに高く積まれている。

┃ チャーハン・スープ・ラーメン

上田は前衛芸術家(財津一郎)や前衛音楽家大泉滉)のアトリエを巡り、やっとのことで研吉を見つけ出す。彼はフーテンになっており、新宿のYOSAKOI系ゴーゴークラブでだらだらした日々を過ごしていた。上田はおなかをすかせた研吉を場末の中華屋へ連れて行く。必死でチャーハンとスープをかきこむ研吉。スープにはこしょうをハプパフかけている。上田はその様子にびっくりしながらラーメンをすすっているのであった。
このときの食器、チャーハンは八角形で足の高い皿、スープは白い小さな湯呑み風の鉢でレンゲ付きというのがいかにも街の中華屋風で良い。

┃ 列車内で松茸の七輪焼き

今日も上越線急行内を検札して回る上田。なんと車内で七輪で松茸をあぶっている人がいる。上田は火気厳禁と注意して松茸を没収するが、松茸はアッチアチ。とりあえず松茸をポケットにしまう(?)上田なのであった。

┃ フーテンカクテルとスリク

まただらだらとしたフーテン生活に戻ろうとする研吉を説得するため、上田は自らもロン毛カツラを装着&袖無しGジャンを着てフーテンになる。フーテン仲間たちはおもしろがって上田に「フーテンカクテル」と「スリク」を飲ませる。
フーテンカクテルとは酢・塩・こしょうなどその辺の調味料や各種酒類をミックスしまくった地獄カクテル。ぶくぶくと泡が立ち、グラスからスモークがもうもうと出ているのがあやしすぎる。
スリクはつまり「クスリ」のこと。上田はそうとは知らず水なしでボリボリ食べてしまい、少しラリってしまう。お味のほどは「ちょっとすっぱくて、梅干しみたいな味。噛まずに食べると別の味がする。酒の肴に良い」らしい。

┃ スナック菓子・りんご・大根

研吉を伴って上機嫌で帰宅した上田。しばらくこいつを泊めてやることにしたからと幸江に紹介するが、幸江は上田は頭がおかしくなったと思い込み、娘を野々宮家へ行かせて精神科医を呼んできてくれるよう頼む。
上田はひとまず研吉にクラッカーのようなスナック菓子を食べさせて、とおつまみのピーナッツを探索。
間もなく精神科医と野々宮夫人がやって来て、てんやわんやが巻き起こる上田家ダイニング。上田は前衛音楽家に仕込まれた芸(?)で「皿が割れる音がするとアオ〜ンと吠える」という謎の条件反射を習得しており、てんやわんや中にりんごが乗せられた皿が割れた拍子に変な叫び声を上げてしまって、ますます頭がおかしいと思われる。
そこにヒッピー扮装で大根ソードを携えた夏雄もやってきて、上田家の夜は大混乱となる。
確かこのあたりでハイミナール(睡眠薬がどうこうという話が出ていた気がするのだが、詳細を忘れてしまった。

┃ クリスマスディナー

研吉は美和子に再会し、心を入れ替えてまじめに生きて行くことを誓った。その彼を祝して、上田は研吉とそのガールフレンド・房子(城野ゆき)にレストランでのクリスマスディナーをプレゼント。しかもそれがそれぞれへ「6時にレストランへ来てくれ」と伝えておいて、実際行ってみると待っているのは上田ではなく研吉/房子というイキなはからいである。大きなクリスマスツリーやキラキラした飾りで彩られた素敵なレストランでのディナーをプレゼントされた二人は、上田に深く感謝した。

┃ 上田家のクリスマスパーティー

一方上田家。上田は残念ながら勤務で不在だが、幸江と娘、そして夏雄でささやかなクリスマスパーティーをしている。リンゴやバナナ、サラダ、びわ(巨大オリーブにも見えるが……)がテーブルに乗っているのが見える。そして幸江&夏雄はワイン(カッティングの入ったグラス)、娘はバヤリースオレンジで乾杯するのであった。

┃ 白ワイン

そして上田はというと、宿泊地の新潟でべろんべろんに酔っていた。野々宮と一緒にタクシーで宿舎へ帰る途中、ホテルの前で美和子と再会。彼女に誘われ、ホテルの豪華なスイートルームで感謝の乾杯……という夢を見ながらタクシーからずり落ち、野々宮をあわてさせてた。
夢の中の美和子&上田は、白ワインシャンパンかも)で乾杯していた。

┃ みかん

上田一家と研吉&房子カップルは、東海道新幹線勤務の夏雄が取ってくれた「初詣列車」で伊勢神宮へ年越し参りへ行くことに。東京16:30発で伊勢市22:14着という年末ダイヤで行くお宮参りに一家は大興奮。新幹線の中でも上田は具合が悪そうなお客さんや探し物をしているお客さんを心配するが、車掌として乗っている夏雄に「お兄さん今日はお客さんなんだから、みかんでも食べてなよ」と言われる。
ちなみに更生した研吉は、駅の売店に雑誌を搬入する仕事(鉄道弘済会)についている。この仕事の様子を撮ったカットで、彼がみかんをたくさん売っているキオスクに雑誌を搬入する様子が映されている。雑誌などを置いている倉庫は本当の国鉄の倉庫でロケしているっぽい。

┃ お雑煮とみかん

伊勢神宮のお参りをすませた一行はテレビの取材に捕まり、年明けすぐの全国各地の神社を多元中継する番組に出演。新潟の芸者置屋では、美和子がお雑煮やみかんを食べながら、その様子を優しく見守っているのであった。

『闘牛に賭ける男』婚約披露宴、スペインバル「MATADOR」、ガルシア氏のカフェ、ウィルソン氏のレセプション、TV局の食堂で50円のカレーライス、新グレラン、劇団の「愛の砂漠」成功祝い打ち上げ、TVを観ながら家族団欒のスイカ、企画成功祝いの打ち上げ、「HOTEL FENIX」の屋外レストラン、クリスマスイブの「MATADOR」

闘牛に賭ける男

新聞社の事業部に勤める北見徹(石原裕次郎)はスペイン闘牛招聘の企画を立てていたが、折悪くスペイン風邪が世界的に流行し、政府から渡航中止命令が出た闘牛団は来日ができなくなる。それでも北見は招聘に異様な執着を見せたため、会津若松支局への転属を命じられた。一方、劇団女優・冴子(北原三枝)はエリート銀行員・江藤(二谷英明)と婚約することになっていたが、いままで情熱的になったことのない彼女は親同士が進めたその縁談に乗り気でなかった。そしてその夜、スペインバル「MATADOR」で北見と冴子は出会った。「MATADOR」ではスペインで妻を殺し狂気に陥った画家(芦田伸介)が、闘牛士が牛に突き殺される場面を描いたスケッチを売って酒を飲もうとしていた。その絵にまるで血のように赤いケチャップがかかった瞬間、彼らの運命は動き出す。


海外ロケがウリの観光アイドル映画かと思いきや、異常なまでに視野狭窄な人々がすさまじい自己主張とありえないレベルのわがままを大声で喚き立てあいローロッパを飛び回るという狂った作品だった。美術の木村威夫のエキセントリックな世界観と異様なほど明るく情熱的なスペインの情景がマッチしすぎて、ヴィジュアル的にも完全に狂っていた。北原三枝が完全におかしい女なのもすごいけど、石原裕次郎はそれに輪をかけた狂人役。主演が石原裕次郎の意味、全然ない……。むしろ、裕次郎主演作を敬遠している人に観てほしい怪作。舛田利雄、芸風広すぎ……。


┃ 婚約披露宴

冴子と銀行員・江藤との婚約披露宴は、ホテルの宴会場のような豪奢な広間での立食パーティー形式。と言っても披露宴に比べたら簡易なものらしく、あまり料理は置かれていなかった。出されているのはカクテル(三角グラス入り)、大皿に盛られた肉料理など。

┃ スペインバル「MATADOR」

江藤や北原の行きつけの店。石造りの地下倉庫風で天井が低く、アーチや柱で空間が区切られ、木の床には高低差がつけられている店内が白熱灯(ろうそくや暖炉の光?)の橙色の光に照らされている不思議な店。ホールでは気のいい民族衣装姿の歌手がマンドリン(フラメンコギターだったかも)を奏でている。
婚約披露宴を抜け出した江藤と北原はこの店でレモンサワー?とウィスキー?を頼み、ジャーマンポテトのようなものを食べている。料理が何なのかはハッキリ写らないんだけど、傍らに3つ小さな木のボウルがあって、そのうち1つの中身はケチャップ。料理につけるためのディップのようだ。江藤と北原がスペイン民謡を歌う歌手を見ながら話をしていると、彼らのテーブルにみずぼらしい身なりの画家が現れ、闘牛の絵と引き換えに酒を一杯恵んでくれるように懇願される。その画家がテーブルにぶつかった拍子にボウルのひとつの中身(ケチャップ)が絵にかかり、闘牛士が牛に突き殺されるさまを描いた絵は、まるでそこから血が吹き出たように赤く染まる。この画家はスペインで妻を絞め殺して以来頭がおかしくなり、闘牛士が牛に突き殺される瞬間の絵ばかりをスケッチブックに木炭で素描しているらしい。以降この画家はたびたび登場し、彼の絵には何度か本物の血がかかることになる。

┃ ガルシア氏のカフェ

本作は時間軸が過去と現在を何度も行き来する複雑な構成になっているのだが、上記の2項目は過去の回想in日本。この「ガルシア氏のカフェ」は時間軸が現在に戻って、場所はスペイン。
闘牛を実現すべく現地プロモーター・ガルシア氏を追ってスペインに現れた北見。ガルシア氏は過去の興行中止から日本側に不信感があり、北見を避けて街を動き回っているが、北見がジプジー部落の舞踊の雑踏に紛れてパスポートをすられたことを知り、どこからともなくそのパスポートを奪取して、自分の経営するカフェに来るよう北見へ伝える。
ガルシア氏のカフェは、中東の宮殿の中庭のような不思議な内装の店。窓などのない完全に外と遮断された空間で、壁は青と白のタイル作り、天井は見切れるほど高く、柱や入り口のアーチが緑で飾られていて、白く塗られた鉄でできた華奢なデザインのテーブルと椅子が置かれている。イメージとしては、アルハンブラ宮殿の中庭をブルー〜グリーン系の極彩色にして、ビアガーデンとか歌謡ショーの舞台みたいなテイストを加えたような……。
そんな店で、北見は江藤がワインを飲んでいるところに偶然居合わせる。


┃ ウィルソン氏のレセプション

そしてシーンはまた過去へ。新聞社を退職した北見は友人・山川(高原駿雄)と海外のTV映画を買い付けるという事業を始めた。北見が目を付けたのがアメリカのTV王・ウィルソン氏が持つ旧作フィルム。北見はウィルソン氏の歓迎レセプションに強引に入り込み、直談判しようとするが、ぽっと出で資金もさほどない北見ははじめウィルソン氏に無視される。しかし居合わせた江藤が助け舟を出してくれたことで、無事仮契約が成立。
冴子は会場の片隅のカウンターでグラスを傾けながらその様子を見ているのだった。

┃ TV局の食堂で50円のカレーライス

北見のTV映画の販売事業は大当たりし、大手TV局との大口契約にも成功。北見と山川は出演者や局員でごった返すTV局の食堂で「50円のカレーライスばっか食ってがんばって来たな〜(大意)」と話しながら、楽しそうにカレーライス(50円の)を食べる。このカレーライス、超山盛りで盛りつけがすんごく適当でグチャグチャというところが良い。

┃ 新グレラン

「頭が痛くなってきたよ〜っ」と冗談を飛ばす山川に、北見が颯爽と「新グレラン、頭痛と歯痛によく利くよ!」と新グレラン(薬)を渡すというシーンがあった。ここで新グレランのパッケージが「ねーだろ」というレベルで超大写しになるのがさすが日活。武田製薬がスポンサーなんですね。そのインパクトがすごすぎて、なんで高原駿雄が頭が痛いとか言い出したのか忘れた。

┃ 劇団の「愛の砂漠」成功祝い打ち上げ

冴子は江藤と結婚するため、「愛の砂漠」を最後に劇団を引退する予定だった。最終公演直前に北見と再会した冴子の芝居は情熱的なものとなり、舞台は大喝采を浴びた。その打ち上げが「MATADOR」で行われている。皆でビールを飲んでいたところに北見が現れ、冴子に「引退することはない、劇団の皆と自分が買い付けた海外TV映画に日本語吹替をつけるのを手伝ってくれ」と言う。それを聞いていた江藤は怒って反対するが、冴子はその仕事をやりたいと江藤に告げた。江藤は持っていたグラスを握り割ってしまい、狂気の画家が描いたマタドールの絵に血が落ちる。(確かここでもそういうシーンがあったような気がする……絵にかかったかどうかは確信が持てないが、グラスを割ったのは間違いない)

┃ TVを観ながら家族団欒のスイカ

これはイメージカット。居間に置かれたTVで北見が販売した吹替ドラマを見ている大家族の図、というカット。夏の晩という設定らしく、老若男女みんながイカをかじりながらTVに夢中になっている。

┃ 企画成功祝いの打ち上げ

海外の旧作TV映画を買い付け→冴子の劇団俳優を使って日本語吹替をしたものを販売するという事業は超大当たり。北見は事務所でそのお祝い打ち上げをする。たくさんのビールとちょとしたスナックをデスクの上に並べただけのものだが、北見はここでTVドラマの自社制作構想をみんなに発表。盛り上がる一同だっが、冴子だけは「自分にとって北見はすべてであるのに、北見にとっては冴子がすべてではなく、常に仕事のことを考えている」ことに気付き、浮かない表情だった。

┃ 「HOTEL FENIX」の屋外レストラン

時間はまた現在へ。ガルシア氏を追いかけてマドリッド(確か)までやってきた北見は、夫人と娘の計らいで、ガルシア氏と同席して「HOTEL FENIX」の屋外レストランで食事をする。レストランは海に面したホテルの2F屋上部分を使ったリゾート風のつくり。透明なガラスの大きなボウルに色とりどりのフルーツ(野菜かも?)が入ったフルーツポンチのようなものがテーブルに乗っており、ガルシア氏はグレープフルーツジュース、北見はトマトジュースのようなものを飲んでいる。

┃ クリスマスイブの「MATADOR」

大手テレビ制作会社(代理店?)「東通」の妨害により、北見の事業は失敗。クリスマスイブの夜、丸の内のオフィスを引き払うことになる。山川は無事もとの職場へ復帰できるようになったが、北見は行く先がない。クリスマスイブに浮かれ騒ぐ人々を尻目に、「MATADOR」で酔いつぶれる北見。シンガーが心配して声をかけるが、返事もしない。彼が握り割ったグラスから飛び散った血で、またもあの画家が描いた闘牛の絵に血がかかる。

『密告(たれこみ)』冷蔵庫の中身、パンと牛乳、井沢洋菓子店のケーキ、瓶入りのコカコーラ

密告(たれこみ)

8年の刑期を終えて出所した相良(安藤昇)を出迎えたのは、かつての舎弟・井沢(木村功)だった。相楽と井沢、そして花村(南廣)は8年前に土地ブローカーを暗殺したが、何故かそれがあらかじめ警察に密告されており、何者かによって銃撃された上に警察に踏み込まれて逮捕されたのだった。先に出所した花村は何者かに殺され、井沢は堅気となって妻子を養いながら洋菓子店を営んでいた。相楽は花村を殺したという「義足の男」(高松英郎)を探し、彼のボスである大場(安倍徹)を脅迫して真相を吐かせようとするが、やがて彼らが密告者ではありえないことに気づく。8年前の密告者は予想外の人物だった。

安藤昇主演のやくざものアクションサスペンス。
東宝アクション風だが青臭さがなく、落ち着いた雰囲気。暴力シーンがリアル路線で、マジヤクザにしか見えない安藤先生の殺陣が硬質な映像とマッチしていて良い。直前に観た『薔薇の標的』とストーリーの構造が近くて内容を混同しつつあるので、以下間違いがあったらすみません……


┃ 冷蔵庫の中身

相楽が出所すると、井沢が彼の住居を8年前通りに整えてくれていた。冷蔵庫の中身もちゃんとすぐ暮らせるようセッティングしてくれたらしい。さすが飲食店経営。しかし、その部屋には肝心のものがなかった。相楽の恋人だったみや子(沢たまき)の姿である。彼女は半年前に部屋を出てしまい、商社重役(佐竹明夫)の愛人におさまっていたのだった。

┃ パンと牛乳

井沢が整えてくれた部屋でさっそく暮らし始める相楽。朝食は大きなパンの塊と大瓶の牛乳。最近よくコンビニで売っているような巨大メロンパンみたいなサイズのパン(丸いフランスパン、みたいな感じ)をかじりながら、相楽は窓の外を見つめていた。目の前には一階に商店が入ったビルがあり、そこに森永ドライミルクの配達トラックが止まる。相楽はその様子を見つめながら、過去を回想するのだった。

┃ 井沢洋菓子店のケーキ

井沢はいまは「井沢洋菓子店」というケーキ屋を経営している立派な堅気だ。井沢自身がパティシエを務めており、井沢宅を訪問すると、井沢の妻・ひろ子(北林早苗)が彼の作ったショートケーキと紅茶を出してくれる。店の厨房では井沢が大きなスポンジケーキ生クリームを塗っているところだった。手前には仕込み中らしいロールケーキ数本がカットしないままでノッタリと置かれている(チョコ味とバニラ味っぽい)。

┃ 瓶入りのコカコーラ

「義足の男」を追跡する相楽が訪ねるストリップ小屋。猥雑な楽屋ではストリッパーが瓶入りのコカコーラをグイグイ飲んでいる。

『惜春鳥』大滝旅館の料理、牧田家の朝食

惜春鳥

東京で学生生活を送っていた岩垣直治(川津祐介)が久しぶりに故郷・会津若松へ帰ってきた。高校時代の友人4人、バー「サロンX」の息子・牧田康正(津川雅彦)、地元工場で赤旗を振る手代木浩三(石浜朗)、大滝旅館の息子で板前見習いをしている峯村卓也(小坂一也)、足が不自由なため勤めに出ず家業の会津塗りの職人見習となった馬杉彰(山本豊三)は彼を歓迎して大滝旅館に集まる。時を同じくして、芸者・みどり(有馬稲子)と駆け落ちして会津から消えた牧田の叔父・英太郎(佐田啓二)が肺病を煩って帰ってきた。牧田は旧友と叔父が帰ってきたことを喜ぶが、その裏で岩垣は馬杉や峯村から多額の金を借りようとしていた。やがて岩垣がなぜ故郷に帰ってきたのかが露見することで、彼らの友情にヒビが入ってゆくが……

5人の友人同士の友情とその亀裂を描く青春もの。
あまりにキラキラした少年(いまは青年)たちの無垢で麗しい友情の姿に感涙。たとえ友人に裏切られ、また逆に友人を裏切ることになり、あるいはそれを傍らから見つめるしかなくとも、彼らの友情は永遠であることが感じられ、涙がこぼれる。5人がそれぞれ違う思いを抱いてはいるが、それはお互いへの友情ゆえのことだということが胸が締め付ける。透明感あふれる叙情に満ちた佳作。


┃ 大滝旅館の料理

岩垣の帰省に喜ぶ友人一同。泊まるところのない彼のため、旅館の息子である峯村がいい部屋をあてがってくれた上に、板前見習いをしている料理の腕を振るってくれる(彼の手料理かどうかは厳密には謎)。広間には豪華な料理が並べられ、たくさんのビールの栓が抜かれた。きれいどころの芸者・みどりが呼ばれ、彼女は得意の「白虎隊」の舞を披露する。このシーン、会計上は、宿代とビールは峯村持ち、料理は会社員の手代木持ちという設定だったと思う。
本編中では峯村が料理をしているシーンが何度か入るほか、牧田も実家が経営しているバーでバーテンをしている設定のため、たびたび彼がシェーカーを振っているカットが挿入される。

┃ 牧田家の朝食

牧田家では突然帰ってきた英太郎が邪険に扱われていた。肺病を嫌って離れで寝起きさせられ、食事も家族と一緒にはとれないようにされていた。叔父のことが好きな牧田はそんな英太郎のもとをたびたび訪ね、色々と話をしたり、食事を届けたりしている。
きょうの朝食も英太郎は離れでとらされていたが、母屋の茶の間では牧田とその母が向かい合って朝食をとっていた。メニューはごはんとみそ汁。母は牧田が英太郎と仲良くすることが気に食わないらしく、文句をだらだらと言い続けている。牧田はそれに抗議するような態度で、ごはんの入った電気釜(やたら巨大)を自分のほうへ引き寄せて、自分でごはんをよそった。母はなおも文句を言い続けながらご飯茶碗に卵を割り入れ、卵ご飯にして朝食をすすりこんだ。