『砂の器』駅前食堂の丼もの、うり、食堂車でのお弁当・お茶、溶けたアイスクリーム、ビールと焼き鳥、生きた貝や海老のバーベキュー、いなり寿司とおにぎり・おかゆ
早朝、国鉄蒲田操車場構内で発見された扼殺死体。捜査を担当する警視庁・今西栄太郎刑事(丹波哲郎)と西蒲田署・吉村正刑事(森田健作)は被害者が銀座のバーで東北なまりで会話していた/カメダという言葉を連呼していたという情報から秋田県・亀田に出張し、捜査を行うが、手がかりは全く見つからなかった。捜査本部は一旦解散となったが、しばらくして被害者の養子という男性が現れ、被害者は岡山県在住の元警察官・三木謙一(緒形拳)であると判明する。今西は岡山へ出張し三木の身辺調査に乗り出し、一方、吉村は中央線塩山付近で走る列車の窓から白い紙吹雪を舞わせた女がいるという情報をもとに、塩山付近の線路でその「白い紙吹雪」を見つけようと独自の捜査を開始する。
とある殺人事件からはじまる、ある親子の宿命を描く長い長い旅路の物語。
謎が解き明かされてゆく過程に鳥肌が立ち、また、親子の宿命と時を超えた愛に心打たれる。
┃ 駅前食堂の丼もの
丹波哲郎&森田健作は、出張先の秋田県・羽後亀田駅の駅前の食堂で丼ものを食べる。お腹ぺこぺこでガツガツ食う森田健作に対し、年の丹波哲郎は箸が進まない様子。丼の中が写らない(器の汚れも見えないので、どうも中身は空のような気が……)ので、メニューは不明。
┃ うり
捜査が行き詰まって山寺の山門で休憩している丹波&森田に、地元の刑事さんがうりを持ってきてくれる。農家の人が荷車を引いて売り歩いているものを買ってくれたらしい。丹波哲郎はうりを石柱に叩き付けて割り、森田健作と半分こしてジューシーなうりの果汁をすする。
私も小さい頃、夏は祖父母の家の畑でとれたうりを食べさせてもらうのが楽しみだったな。それももうずっとずっと前のことだ。
┃ 食堂車でのお弁当・お茶
秋田からの帰り、丹波&森田は食堂車でお弁当を食べている。その背後でウェイトレスがサングラスの男にサインを求めている。丹波&森田はウェイトレスを呼び止めてお茶を頼み、そのついでにあの男は誰かと訪ねる。その男こそ、本作の鍵となる人物、音楽家・和賀英良(加藤剛)なのだ。
┃ 溶けたアイスクリーム
方言を専門とする国語研究所の信欣三博士は、島根県の出雲地方でも東北弁に似た音韻を持つ方言が話されていることを丹波哲郎に説明。これにより、てっきり「カメダ」だと思っていたその地名は、島根県仁多郡にある「亀嵩(カメダケ)」ではないかということがわかる。このとき、丹波哲郎が地図屋・内外地図で買ってとりあえず入った喫茶店、地図を広げた丹波の傍らにあるのが銀の足付き皿に盛られたアイスクリーム。と言っても丹波が夢中で地図を見ているうちに溶けてしまっていて、丹波はその溶けたアイスを皿からすするように口に流し込む。アイスはバニラアイス、チェリーのような赤いものが添えてある。
前出のうりと言い、本作、暑いときに食べる冷菓(おやつ)の使い方がうまい。